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【教育TOPICS】無償化で北海道の高校選びは変わるか?

北海道教育委員会は2026年9月7日、高校授業料無償化が生徒・保護者の進路選択に与えた影響について、アンケート調査の結果を公表した。

調査対象は道内の中学生、高校1年生とその保護者で、回答は計38,556件。
道教委は今年5月にも2026年度の高校入学者について分析結果を公表しており、両方の資料を合わせると、北海道の高校選びが実際に公立から私立へ動き始めていることが見えてくる。

2026年度、約1000人が私立高校へ

2025年度から2026年度にかけて、公立・私立の高校1年生は次のように変化した。

2025年度2026年度増減
公立高校24,995人24,044人▲951人
私立高校9,479人10,415人+936人

私立高校に在籍する1年生の割合は27.5%から30.2%へ上昇。
前年から2.7ポイントの上昇は、過去10年間で最大の伸びとなった。

道教委は、授業料無償化の影響によって、入学者が約1000人、私立高校へシフトしたと分析している。

少子化によって高校生そのものが減っていくなかで、私立高校の入学者は逆に936人増えた。
単に公立・私立の比率が少し変わったというだけではなく、進学先そのものがかなり大きく動いたと考えた方がよい数字である。

北海道教育委員会「高等学校授業料無償化に係る影響分析(速報)」

現在の中学生でも私立志向が強まる

9月に公表されたアンケートでは、授業料無償化が進路選択に「影響がある」と回答した中学生は35.9%、中学生の保護者では64.8%だった。生徒本人よりも、保護者の進路選択に強く影響している。

さらに「無償化が進路選択に影響する」と回答した保護者について、無償化がなかった場合と、無償化がある場合の進路希望を比較すると、次のようになっている。

希望する高校無償化がない場合無償化がある場合
自宅から通える公立高校74.9%48.0%
自宅から通える私立高校5.5%24.6%

これは保護者全体ではなく、無償化が進路選択に影響すると回答した保護者に限った数字である。
それでも、この層では公立と私立の選択が大きく動いている。

2026年度に実際に起きた変化と、現在の中学生・保護者の意識が同じ方向を向いている。次年度以降も私立志向が続く可能性を示す数字といえるだろう。

北海道教育委員会「高校の授業料無償化に係る影響分析」

影響が特に大きい石狩学区

札幌市を含む石狩学区では、無償化が進路選択に「影響がある」と回答した割合が、中学生41.8%、保護者69.4%となり、いずれも全道の学区で最も高かった。

実際の入学者にも変化が表れている。
石狩学区の私立高校に在籍する1年生は、2025年度の5,999人から2026年度には6,670人となり、1年間で671人増加した。全道の私立高校1年生の増加は936人なので、その中でも石狩学区の増加が非常に大きい。

無償化によって私立高校との授業料の差が縮まっても、そもそも通学可能な範囲に私立高校がなければ選択肢は増えない。私立高校が多数存在する札幌圏では、費用面の条件が変わったとき、その影響が高校選びに直接表れやすい。

実際、今回のアンケートでも、私立高校がある学区の保護者では無償化が進路選択に「影響がある」とした割合が65.9%だったのに対し、私立高校がない学区では53.8%だった。

無償化の影響は北海道全体に一様に表れているわけではなく、選べる私立高校が多い地域ほど大きく表れている。

※「石狩学区」は札幌市だけではなく、札幌市を含む石狩学区全体を指す。

地方から石狩学区の私立高校へ進む生徒も増加

一方、私立高校の少ない地域では別の動きも見られる。

他学区から石狩学区の私立高校へ入学した生徒は、590人から666人へと、前年より76人(約13%)増加した。

道教委の資料では、釧路から石狩が28人から49人、胆振東から石狩が49人から67人、上川南から石狩が34人から49人となるなど、複数の地域で増加している。

北海道の地方部では、私立高校の選択肢そのものが少ない地域も多い。そのため、授業料負担の差が小さくなることは、「地元の公立か、地元の私立か」ではなく、「地元に残るか、石狩学区の私立高校へ進むか」という選択にもつながり得る。

道教委のアンケートにも、無償化によって子どもだけ転居して高校へ通う選択肢が生まれたという趣旨の保護者の回答が掲載されている。

今回の76人増加がすべて無償化によるものとは限らないが、実際の入学者数とアンケートの双方に同じ方向の動きが見られる。

私立高校の「中身」で選べるようになった

無償化の有無によって進路希望が変わり、無償化がある場合に私立高校を選んだ中学生650人について、私立高校を選ぶ際に重視する点を見ると、

部活動が魅力的 85.7%
学力に合っている 68.2%
学校行事が魅力的 67.4%
卒業後の進路に合った学び 59.8%
大学進学に有利 53.4%

となっている。

ここから見えてくるのは、無償化によって単に「私立が安くなった」ということだけではない。

授業料の負担差が縮まることで私立高校が現実的な選択肢となり、そのうえで部活動、学力、学校行事、進路といった学校そのものの条件を比較できるようになった。
これまで「公立と私立のどちらが自分に合っているか」を考える前に、学費によって選択肢がある程度決まっていた家庭にとっては、高校選びの順序そのものが変わることになる。
道教委も、費用負担の公私間の差が縮小したことで、自分に合った学校を検討しやすくなったと分析している。

ただし、「高校無償化」は私立高校にかかる費用がすべて無料になる制度ではない
制服、教材、端末、学校行事、部活動、通学費など、授業料以外の費用は引き続き必要なのは、この記事で検証したとおりである。

「公立が第一、私立は併願」が変わり始める?

北海道では長く、まず公立高校を第一志望として考え、私立高校は併願先として受験する高校選びが一般的だった。

今回の数字を見る限り、その構図は変わり始めている。
2026年度には約1000人が私立高校へシフトした。現在の中学生・保護者への調査でも私立志向が強まっている。さらに、その変化は札幌市を含む石狩学区で特に大きく、他地域から石狩学区の私立高校へ進学する生徒も増えた。

この動きは、公立高校にとっても無関係ではない。
北海道では少子化を前提として、公立高校の募集定員や学校配置の見直しが続いている。そこに公立から私立への進学先の移動が加われば、公立高校の定員充足がこれまで以上に難しくなる学校も出てくるだろう。

実際、道教委は2026年度の公立高等学校配置計画地域別検討協議会で、今回の「高等学校授業料無償化に係る影響分析」を会議資料として使用している。
無償化による進路動向の変化は、すでに公立高校の配置を考えるうえでも無視できない材料となっている。

また、影響の表れ方も地域によって異なる。
私立高校の多い石狩学区では、公立と私立を直接比較して高校を選びやすくなった。一方、私立高校の少ない地域では、石狩学区の私立高校へ進学するという選択が以前より現実的になっている。

「私立は公立に行けなかった場合の選択肢」という位置づけだけでは、今後の北海道の高校入試を捉えにくくなっていくだろう。
2026年度は、その変化が実際の数字にはっきりと表れた最初の年になるのかもしれない。

参考資料

北海道教育委員会「高校の授業料無償化に係る影響分析」

北海道教育委員会「令和8年度 高校の授業料無償化に関するアンケート結果報告書(概要版)」

北海道教育委員会「令和8年度 高校の授業料無償化に関するアンケート結果報告書(本体)」

北海道教育委員会「高等学校授業料無償化に係る影響分析(速報)」

北海道教育委員会「地域別検討協議会について」

進学教室FiveSchools

2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。

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