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FiveSchoolsオフィシャルブログ

中学校から部活動がなくなる? ②

前回の記事では、部活動の地域展開について、制度の仕組みと札幌市の現状を整理した。

国は2031年度までに、休日の学校部活動について原則すべての地域展開を目指している。札幌市でも2026年度から、学校全体の部活動を地域クラブ化するモデル事業が始まっている。

では、2031年度までの地域展開は、本当に実現できるのだろうか。

そして、仮に実現できたとして、それによって子どもたちの活動環境はよくなるのだろうか。

今回は、制度の実現可能性と、その先にある「望ましい部活動」について、FiveSchoolsとしての見解を述べたい。

Q.2031年度までに、札幌市の地域展開は実現するのか?

札幌市内のすべての学校部活動で、2031年度までに休日の地域展開が完了する可能性は、現時点では高くないと考える。

もちろん、改革が進んでいないわけではない。

2026年度の札幌市のモデル事業は、学校全体の運営体制まで検証するという点で、大きな前進である。

しかし、札幌市立中学校の部活動数は2024年度時点で1,170部。一方、2026年度のモデル事業で当初想定されたのは50~60部活動程度である。

両者は年度も集計上の位置づけも異なり、モデル事業の対象数を地域展開の達成率として扱うことはできない。

それでも、4か月間の実証と、市内すべての部活動を継続的に運営する仕組みとの間には、大きな隔たりがある。実証終了後は学校部活動へ戻すことも、札幌市の仕様書に明記されている。

必要なのは、指導者だけではない。運営団体、活動場所、報酬、研修、安全管理、保険、保護者対応などの体制も整えなければならない。

しかも、競技人口が多い活動と少ない活動、都市部と郊外では、受け皿の確保しやすさも異なる。

札幌市が実施した教員アンケートでは、地域クラブでの指導に協力可能と答えた教員は約1割にとどまり、約7割が従事できないと回答している。

ただし、この調査の回答率は46.27%であり、その結果だけで全教員の意向を断定することはできない。それでも、教員の協力に依存する方法には限界があるだろう。

札幌市教育委員会・検討委員会資料(2026年1月28日)

今後は、指導者や運営団体を確保しやすい競技・地域から移行が進み、それ以外では学校部活動や地域連携が残るという形が現実的ではないだろうか。

ただし、民間クラブや競技団体との連携が想定以上に進めば、移行が加速する可能性もある。これは現時点の資料に基づく予測であり、確定した将来像ではない。

Q.期限を守ることを優先すると、何が起きる?

もう一つ懸念しているのは、2031年度という期限を守ること自体が、改革の目的になってしまう危険性である。

十分な受け皿が整わないまま地域展開を進めれば、次のような問題が起こり得る。

  • 指導者や運営団体が見つからず、活動そのものが縮小・廃止される
  • 会費や送迎負担が増え、参加を諦める生徒が出る
  • 人材確保を急ぐあまり、指導や安全管理の質が低下する
  • 運営主体だけを移し、実際には教員が従来どおり活動を支え続ける

これは改革によって必ず起こる問題ではなく、準備が不十分なまま移行を急いだ場合のリスクである。

特に問題なのは、地域展開した部活動の数だけが成果として評価されることだろう。

仮にすべての部活動が地域展開したとしても、その結果、参加する生徒が減り、家庭の経済力による格差が拡大したのであれば、それを成功とは呼びにくい。

反対に、学校部活動が一部残っていても、教員の負担を減らしながら活動機会を維持できているなら、必ずしも失敗とは言えない。

地域展開の期限は、子どもの活動機会を守るための手段であって、その活動機会を犠牲にしてまで守るべき目標ではない。

Q.これまでの部活動は、なぜ安かったのか?

地域展開を考えるうえで、費用の問題は避けられない。

笹川スポーツ財団の調査では、中学生のスポーツ活動について家庭が1年間に支払う費用の平均は、学校の運動部で50,857円、スポーツクラブで155,799円だった。

スポーツクラブの費用は、学校の運動部の約3倍である。

ただし、活動時間や競技水準、指導内容などが異なるため、この差がそのまま地域展開による費用増加を意味するわけではない。

笹川スポーツ財団・調査結果(2025年4月21日)

そもそも学校部活動が比較的安価だったのは、教員による指導や学校施設の利用によって、家庭が直接支払う費用を抑えられていたからである。

しかし、それは活動に必要なコストが存在しなかったという意味ではない。

地域展開は、これまで家庭の会費としては見えにくかった運営コストを、表面化させる改革でもある。

札幌市の2026年度モデル事業では、従来の部活動費以外の追加徴収は原則として行わないことになっている。

だが、市内全体で恒久的に運営する場合も同じ条件を維持できるとは限らない。

行政が十分な財源を確保できなければ、指導者への報酬や運営費が家庭の負担へ移る可能性がある。

ここで問うべきなのは、単に地域クラブの会費をいくらにするかではない。

子どものスポーツ・文化活動を、どこまで公的に保障すべきなのか。

個人の趣味や習い事として、一定の受益者負担を求める考え方には合理性がある。

一方、子どもの成長や健康、社会参加に関わる活動として考えるなら、家庭の経済力によって参加機会が大きく左右されないよう支える必要もある。

私は、少なくとも誰もが身近な場所で気軽に参加できる活動については、一定の公的保障が必要だと考える。

Q.家庭の経済力で、活動機会が変わってもよいのか?

経済的な格差は、地域展開が始まる前から存在する。

笹川スポーツ財団の調査では、運動部・スポーツクラブのいずれにも加入していない子どもの保護者のうち、「費用の負担が大きく、運動やスポーツをさせることが難しい」と回答した割合は、世帯年収400万円未満で52.1%、1,000万円以上で18.1%だった。

これは、どちらにも加入していない子どもの保護者を対象とした調査であり、地域展開による費用増加の影響を直接測定したものではない。

しかし、家庭の経済状況によって、スポーツへの参加をめぐる負担感が大きく異なることが分かる。

笹川スポーツ財団・調査結果(2025年11月12日)

地域展開によって会費が上がり、活動場所も遠くなれば、こうした格差が広がる可能性がある。

問題は金銭だけではない。保護者の勤務時間や送迎の可否によっても、参加しやすさが変わる。

本人に意欲があっても、家庭の事情によって活動を諦めざるを得ないのであれば、望ましい制度とは言い難い。

Q.そもそも、部活動は何のためにあるのか?

ここまでの議論には、一つの前提がある。

部活動の目的は、生徒全員にとって同じではない。

例えば、同じバスケットボールでも、全国大会を目指して毎日練習したい生徒と、友達と週に1~2回楽しみたい生徒では、求める環境が違う。

どちらが優れているという問題ではない。

しかし、従来の学校部活動では、同じ学校・同じ競技であれば、一つの活動方針のもとに異なる目的の生徒が集まることになりやすかった。

競技力の向上を重視する部活動では、気軽に楽しみたい生徒が参加しづらくなる。一方、専門的な指導を求める生徒にとっては、学校の指導体制では十分でない場合もある。

地域展開を機に、活動の目的や参加頻度に応じた選択肢を用意することには、大きな価値がある。

ただし、活動の目的によって選べることと、家庭の経済力によって選択肢が決まることは、まったく別の問題である。

Q.部活動を学校から完全に切り離すべきなのか?

部活動を地域へ移せば、教員の負担を減らし、専門的な指導や学校を超えた交流の機会を増やせる可能性がある。

一方、学校部活動には、放課後の居場所や、先輩・後輩との関係、勉強以外で自分の得意なことを見つける機会という役割もあった。

学校生活になじめない生徒にとって、部活動が登校の動機になっている場合もあるだろう。

こうした価値を、地域クラブがすべて代替できるとは限らない。

もちろん、だからといって従来の学校部活動をそのまま残せばよいわけでもない。教員の善意や長時間労働に依存する仕組みは、持続可能ではないからである。

学校部活動の長所を残しながら、運営の負担を変えていく方法を考えるべきではないだろうか。

FiveSchoolsが考える、望ましい部活動のあり方

私は、学校には誰でも低い負担で参加できる活動機会を残し、地域クラブでは専門的・多様な活動を提供するという方向が望ましいと考える。

例えば、友達と週に1~2回スポーツを楽しみたい生徒には、学校施設など身近な場所で、気軽に参加できる活動を用意する。

一方、本格的な競技や高度な文化活動に取り組みたい生徒には、地域クラブが専門的な指導や充実した環境を提供する。

ただし、学校に活動を残す場合でも、指導を従来どおり教員に任せては意味がない。

学校施設を活用しながら、外部指導者や地域団体が運営を担う方法も検討する必要がある。

また、気軽に参加する活動と専門的な活動の間に、固定的な上下関係を作るべきではない。

途中から本格的な活動へ進むことも、競技中心の活動から離れて楽しむことを重視する活動に移ることもできる方がよい。

経済的に参加が難しい生徒への支援も不可欠である。

そして、活動しない自由、途中で辞める自由、複数の活動を経験する自由も尊重されるべきだろう。

部活動の価値は、大会での成績や、同じ活動を3年間続けたかどうかだけでは測れない。

スポーツや文化芸術を好きになること、友人と交流すること、学校生活に居場所を見つけることにも価値がある。

部活動改革は、何をもって成功とするべきか

全国PTA連絡協議会が2025年に実施した調査では、部活動の地域展開について、賛成・どちらかといえば賛成が計51.3%、反対・どちらかといえば反対が計22.9%だった。

教員の働き方改革につながると考える回答が49.3%あった一方、保護者の送迎や費用の負担増加を心配する回答も38.7%あった。

全国41都道府県から寄せられた1,004件の回答であり、全国の保護者全体の意見を代表するものではないが、改革への期待と不安が並存していることが分かる。

全国PTA連絡協議会・部活動の地域展開に関する調査結果

改革の成果を評価する際には、地域展開した部活動の数だけでなく、子どもたちの参加状況、家庭や地域による格差、教員の負担、安全性、運営の持続可能性を確認する必要がある。

そのためにも、行政には活動費や参加人数などの情報を継続的に公開してほしい。

部活動改革が予定どおり進んだかどうかよりも、その結果、子どもたちにどのような環境が残ったのか。

本来、問われるべきなのはその点である。

部活動改革の成功とは、学校から地域へ運営主体を移すことではない。子どもたちが、家庭の経済状況や居住地域に左右されず、自分の希望する活動に参加できる環境を、持続可能な形で実現することである。

2031年度という期限は、その目的に向かうための目標であって、目的そのものではない。

進学教室FiveSchools

2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。

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