NANAIRO DAYS
2026.10.20
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成している。入試難易度は主に河合塾の2027年度入試予想、学費は大学公式資料を参照した。年度によって入試制度や学費が変更されるため、受験時には最新の募集要項を確認してほしい。
医師になりたい。しかし、北海道大学医学部医学科は全国でも屈指の難関であり、札幌医科大学や旭川医科大学への合格も容易ではない。
そこで考えられるのが、道外の医学部へ進学するという選択肢である。
北大より難易度の低い地方国公立医学部を目指すこともできるし、私立医学部まで広げれば受験機会も増える。
しかし、医学部受験には厳しい現実がある。
学力が足りなければ志望校の難易度を下げる、という通常の大学受験で使える方法が、医学部では経済的な理由で通用しないことがある。
もう一つ気になるのは、道外で医学を学んだ後、北海道へ戻って医師になれるのかという問題だろう。
今回は、道外医学部への進学を、入試難易度、必要な費用、北海道への帰道という3つの観点から考える。
北大医学科への合格が難しい場合、道外の地方国公立医学部に目を向けることには十分な意味がある。
しかし、札幌医科大学や旭川医科大学より大幅に入りやすい国公立医学部が、全国に多数あるわけではない。
河合塾の2027年度入試難易予想を見てみよう。
| 大学 | 共通テストボーダー | 個別試験偏差値 |
|---|---|---|
| 札幌医科大学 | 79% | 62.5 |
| 旭川医科大学 | 78% | 62.5 |
| 弘前大学・一般枠 | 78% | 62.5 |
| 福島県立医科大学・一般枠 | 79% | 62.5 |
| 島根大学・一般枠 | 79% | 62.5 |
| 秋田大学 | 80% | 62.5 |
| 山形大学・一般枠 | 81% | 62.5 |
※河合塾Kei-Netの2027年度入試難易予想。医学科一般選抜・前期日程の代表的な数値。ボーダーは合格可能性がおおむね50%と予想される水準であり、実際の合格最低点ではない。
上記の大学は、共通テスト・個別試験ともに要求される学力水準が近い。
つまり、旭川医科大学への合格が学力的に難しい受験生にとって、道外の地方国公立医学部も基本的には難しい。
道外に行けば簡単な国公立医学部が見つかる、という話ではない。
一方、大学によって共通テストと個別試験の配点、数学・理科の出題内容などは異なる。
共通テストが得意な生徒と、数学・理科の記述問題が得意な生徒では、有利になる大学が違う場合もある。
そのため、同程度の偏差値であっても、自分の得点力に合った大学へ出願先を変更することには意味がある。
また、地方国公立医学部には地域枠などの特別選抜があり、募集人数の一部が地元出身者向けに設定されている場合もある。北海道出身者が受験できる一般枠の人数や条件は、大学ごとに確認しなければならない。
なお、国公立大学の一般選抜前期日程は原則1校しか出願できない。全国の医学部を何校も受験し、どこかに合格すればよいという戦略は取れない。
私立医学部まで志望校を広げれば、受験できる大学は大幅に増える。
河合塾の2027年度入試難易予想から、代表的な私立医学部を並べてみよう。
| 大学 | ボーダー偏差値 |
|---|---|
| 慶應義塾大学 | 72.5 |
| 日本医科大学・順天堂大学 | 70.0 |
| 国際医療福祉大学・関西医科大学 | 67.5 |
| 藤田医科大学・東北医科薬科大学 | 65.0 |
| 岩手医科大学・獨協医科大学 | 62.5 |
| 金沢医科大学 | 62.5 |
| 川崎医科大学 | 60.0 |
※2027年度入試の代表的な一般選抜の予想値。入試方式によって難易度は異なる。
偏差値60.0~62.5の私立医学部まで広げれば、難関国公立医学部への合格が厳しい受験生にとっても、新たな受験機会が生まれる。
また、私立医学部の一般選抜では、英語・数学・理科を中心とする試験が多い。国公立大学のように、大学入学共通テストで国語、地歴公民、情報まで含めて得点することが必須とは限らない。
国公立と私立では受験科目や受験者層が異なるため、偏差値を直接比較することはできないが、私立医学部を併願することで合格の可能性を広げられることは確かである。
しかし、ここでもう一つ大きな問題が生じる。
学費である。
私立医学部の学納金は、大学によって大きく異なる。
代表的な大学の入試難易度と6年間の学納金を比較してみよう。
| 大学 | 偏差値目安 | 6年間の学納金 |
|---|---|---|
| 国際医療福祉大学 | 67.5 | 1,850万円 |
| 藤田医科大学 | 65.0 | 2,185万円 |
| 岩手医科大学 | 62.5 | 3,400万円 |
| 獨協医科大学 | 62.5 | 3,660万円 |
| 東北医科薬科大学 | 65.0 | 3,700万円 |
| 金沢医科大学 | 62.5 | 3,950万円 |
| 川崎医科大学 | 60.0 | 4,550万円 |
※偏差値は河合塾の2027年度入試予想。学納金は大学公式公表額であり、2026年度と2027年度の金額が混在する。委託徴収金、寮費、生活費等は原則含まない。東北医科薬科大学は2027年度入学者の金額を使用している。
比較的学費の安い私立医学部には、難易度が高い大学が多い。
一方、難易度を下げて大学の選択肢を広げると、6年間で3,000万~4,000万円以上かかる大学が候補に入ってくる。
例えば、国際医療福祉大学と川崎医科大学では、学納金だけで2,700万円の差がある。
しかも、表の金額が必要な費用のすべてではない。各大学では、委託徴収金、教材費、実習費、住居費などが別途必要となる場合がある。
医学部受験では、学力に合わせて難易度の低い大学を選べるのは、その大学の学費を負担できる家庭だけである。
すべての私立医学部で学費と難易度が反比例するわけではない。しかし、難易度を下げるために数千万円の追加負担が必要になる場合があることは、明確な事実である。
道外に進学する場合、学費に加えて生活費が必要になる。
例えば、家賃、食費、光熱費などの合計を月10万円と仮定すると、6年間の生活費は720万円となる。
この条件で、学納金と生活費を合計してみよう。
| 進学モデル | 学納金 | 6年間の生活費 | 総額 |
|---|---|---|---|
| 国公立・標準額 | 約350万円 | 720万円 | 約1,070万円 |
| 私立・1,850万円型 | 1,850万円 | 720万円 | 2,570万円 |
| 私立・2,200万円型 | 2,200万円 | 720万円 | 2,920万円 |
| 私立・3,400万円型 | 3,400万円 | 720万円 | 4,120万円 |
| 私立・4,550万円型 | 4,550万円 | 720万円 | 5,270万円 |
※生活費月10万円は説明のための仮定である。国公立の学納金は入学料282,000円、授業料年額535,800円が6年間続いた場合の試算。実際には大学ごとの学費、住居費、追加費用等によって変わる。
国公立医学部なら、下宿しても総額1,000万円程度という水準で検討できる。
一方、私立医学部では比較的学費の安い大学でも2,500万円を超え、高額な大学では5,000万円以上になる。
この差は極めて大きい。
また、北海道内でも、札幌から旭川医科大学へ進学して下宿する場合には生活費が必要になる。道内か道外かという区別以上に、自宅通学できるかどうかが家計に与える影響は大きい。
経済的な余裕が十分にない家庭にとって、私立医学部の通常学費は大きな障壁となる。
しかも、必要になるのは6年間の学費だけではない。
私立医学部では、合格後の入学手続時に数百万円の納付を求められる場合がある。
例えば、藤田医科大学の2027年度入学時納付額は、委託徴収金を含め348万6,000円となっている。
6年間の学費を最終的に支払える見込みがあっても、入学手続までに必要な現金を用意できなければ進学できない。
したがって、私立医学部を受験する家庭では、少なくとも6年間の総費用と、入学時に必要な納付額の両方を確認しておく必要がある。
日本学生支援機構の第二種奨学金では、私立大学の医学・歯学課程に在籍する場合、月額12万円に4万円を増額して、最大月額16万円を借りられる。
仮に6年間、毎月16万円を借り続ければ、総額は1,152万円となる。
これを私立医学部の学納金と比べると、次のようになる。
| 6年間の学納金 | 奨学金借入総額 | 不足額 |
|---|---|---|
| 1,850万円 | 1,152万円 | 698万円 |
| 2,200万円 | 1,152万円 | 1,048万円 |
| 3,400万円 | 1,152万円 | 2,248万円 |
| 4,550万円 | 1,152万円 | 3,398万円 |
※6年間の全期間にわたり最大額の貸与を受けた場合の単純計算。奨学金の採用には審査があり、実際の貸与期間や金額は異なる場合がある。生活費・諸費用は不足額に含まない。
日本学生支援機構の奨学金だけで、一般的な私立医学部の学費をまかなうことはできない。
しかも第二種奨学金は有利子であり、卒業後に返還しなければならない。
医師の平均年収が高いからといって、1,000万円を超える借入れを軽く考えるべきではない。
私立医学部には、入試成績が優秀な学生に対して学費を減免する制度もある。
例えば、国際医療福祉大学では、2027年度入試で特待奨学生S・Aなどの制度が設けられている。
特待奨学生Sなら6年間の学納金が免除される。
こうした制度を利用できれば、私立医学部でも国公立大学と同程度、あるいはそれ以下の負担で進学できる可能性がある。
しかし、特待生に選ばれるためには、入学試験で極めて優秀な成績を収めなければならない。
国公立医学部に届かないため私立医学部を検討する受験生が、特待生になることを前提に資金計画を立てるのは現実的ではない。
通常学費では進学できない家庭は、特待資格を得られなかった場合には入学を辞退する可能性も考えておく必要がある。
結論として、戻れる。
医師免許を取得した後の初期臨床研修先は、原則として全国の医療機関を対象としたマッチング制度によって決まる。
道外の医学部を卒業したからといって、北海道の臨床研修病院に応募できなくなるわけではない。
北海道の公式発表によると、道内で初期臨床研修を行う医師は近年300人を超えて推移しており、そのうち道外の医育大学出身者が115人いるとされる。
道外の医学部から北海道の病院へ進むことは、珍しい進路ではない。
ただし、この115人全員が北海道出身者という意味ではない。また、北海道出身者が道外医学部へ進学した場合、何割が戻っているかを示す数字でもない。
確実に言えるのは、道外の医学部を卒業した医師を、北海道の病院が実際に受け入れているということだ。
道外国公立大学だけではなく、私立医学部の卒業生も北海道で初期臨床研修を受けている。
例えば、市立函館病院は、これまでの研修医の出身大学として、岩手医科大学、獨協医科大学、金沢医科大学、北里大学、杏林大学、福岡大学などを公表している。
したがって、道外の私立医学部へ進学したこと自体が、北海道への就職を妨げるわけではない。
希望する病院に採用されるかどうかは、病院側の募集人数や選考、マッチング結果によって決まる。
道外の医学部を卒業し、そのまま道外で2年間の初期臨床研修を受けた後、専門研修や就職の段階で北海道へ移ることも可能である。
医師としてどの診療科を選ぶかによって、専門研修を受けられる施設や募集人数は異なる。
北海道へ戻る希望が強い場合には、医学部在学中から北海道の臨床研修病院や専門研修プログラムを調べておくとよい。
道外の医学部を卒業して北海道へ戻ることは、制度上可能である。
しかし、他県の地域医療に従事することを条件とした地域枠や修学資金制度を利用した場合、卒業後すぐに北海道へ戻ることができなくなる場合がある。
例えば、東北地方の医師確保を目的とした修学資金制度では、返還免除を受けるために、卒業後の一定期間を指定地域の医療機関で勤務することが求められる。
経済的な支援を受けられることは魅力だが、その条件が北海道で働くという希望と衝突するなら、利用は慎重に考える必要がある。
また、地域枠ではなくても、奨学金や教育ローンの中に卒業後の勤務先について条件を設けている制度がある。
北海道へ戻りたい人にとって、道外の大学へ進学すること自体は問題ではない。注意すべきなのは、入学時に他地域での勤務義務を負うことである。
道外医学部への進学を考える際には、家庭の資金力によって受験可能な大学が大きく変わる。
国公立大学の学費と下宿費までなら負担できる家庭は、道内外の国公立医学部を中心に志望校を探すことになる。
私立医学部の学費2,000万円台まで負担できる家庭なら、国際医療福祉大学や藤田医科大学なども候補になる。しかし、これらの大学も入試難易度は高い。
3,000万~4,000万円台の学費を負担できる家庭なら、さらに難易度の低い私立医学部まで選択肢が広がる。
つまり、医学部受験では、学力が同じでも、家庭の経済力によって受験できる大学の数が大きく変わる。
医学部進学には、学力による格差だけでなく、家庭の資金力による進学機会の格差も存在する。
これは医学部を目指すうえで、避けて通れない現実である。
一方、北海道で医師として働くために、北海道内の医学部へ進学しなければならないわけではない。
道外の医学部を卒業して北海道の病院へ戻る道は、実際に利用されている。
医学部をどこにするかは、将来どこで働きたいかと切り離して考えられる。
北海道に残るために、必ずしも北海道の医学部に合格する必要はないのである。
進学教室FiveSchools
2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。
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