NANAIRO DAYS
2026.10.19
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成している。入試制度、募集人員、学費、地域枠、修学資金制度等は変更される場合がある。特に2027年度の正式な学生募集要項と2028年度入試の変更予定については、各大学の最新情報を確認してほしい。
医師は、高い専門性と収入を持つ職業である。
しかし、医師になるには6年間の大学教育が必要であり、卒業後も研修が続く。働き始めてからの収入や生活も、診療科や勤務する医療機関によって大きく異なる。
北海道で医学部へ進学する場合には、さらに考えておきたい問題がある。
大学や入試区分によって、卒業後にどこで研修し、どの地域で働くかについて条件が設けられていることだ。
今回は医師の収入や働き方を確認したうえで、北海道内3大学の医学部入試、学費、卒業後の勤務条件について紹介する。
医師になるための一般的なルートは、大学の医学部医学科で6年間学び、医師国家試験に合格することである。
医師免許を取得した後は、原則2年間の初期臨床研修を受ける。その後、内科、外科、小児科、産婦人科などの専門研修へ進む医師も多い。
18歳で大学に入学すれば、順調に進んでも医師免許の取得は24歳前後、初期臨床研修の修了は26歳前後となる。
なお、臨床研修医は医師免許を取得したうえで、医療機関から給与を受けながら診療経験を積む立場である。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、医師の全国平均年収は1,512.3万円となっている。
医療職の中でも突出した水準だが、経験年数や勤務先、診療科、当直などによって収入は異なる。
北海道内の医療機関が公表している研修医の給与を見てみよう。
| 研修先 | 公表給与 |
|---|---|
| 北海道大学病院 | 月額約34万円 |
| 札幌医科大学附属病院 | 日額14,285円+研修手当等 |
| 旭川医療センター | 1年次月額477,900円 |
※北海道大学病院は諸手当込み・賞与別の概算。札幌医科大学附属病院は日額制、旭川医療センターは2027年度採用予定者の月額給与で、当直・時間外手当は別途支給される。算出条件が異なるため、単純な金額比較はできない。
札幌医科大学附属病院では、当直は月4回程度、手当は1回17,500円とされている。旭川医療センターでは当直1回につき20,000円が支給される。
このように、研修医の段階から勤務先によって給与や勤務条件には違いがある。
また、医学部を卒業した大学と、初期臨床研修を受ける病院は必ずしも同じではない。地域医療に関係する入試区分などでは研修先の選択に条件が付くこともあるが、通常は卒業後に研修先の選考を受ける。
医師の勤務環境は、診療科と勤務先によって大きく変わる。
救急科では夜間・休日を含めた急患への対応が中心となる。外科では予定手術のほか、緊急手術を担当する場合もある。
産婦人科では分娩が予定どおりに始まるとは限らず、小児科でも夜間・休日の救急診療に携わる医師がいる。
一方、予約制の外来診療を中心とする医師には、比較的規則的な時間帯に働く人もいる。
同じ診療科でも、救急病院と診療所では勤務条件が異なるのである。
2024年4月には、勤務医の時間外・休日労働について上限規制が導入された。
原則的な上限水準は年間960時間だが、一定の指定を受けた医療機関には年間1,860時間までの特例も設けられている。
これらは実際の平均残業時間ではなく、制度上の上限である。
医師の収入を考える際には、当直回数、時間外労働、緊急呼び出し、年間休日なども確認しておきたい。
北海道内で医学部医学科を設置しているのは、北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学の3校である。
いずれも6年制だが、入試の仕組みや卒業後の研修条件には違いがある。
医学科の一般選抜・前期日程について、大学入学共通テストと個別試験等の配点を整理すると、次のようになる。
| 大学 | 共通テスト | 個別試験等 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 北海道大学 | 315点 | 525点 | 840点 |
| 札幌医科大学 | 750点 | 800点 | 1,550点 |
| 旭川医科大学 | 470点 | 500点 | 970点 |
個別試験等の内訳は次のとおりである。
| 大学 | 数学 | 理科 | 外国語 | 面接 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道大学 | 150点 | 150点 | 150点 | 75点 |
| 札幌医科大学 | 200点 | 200点 | 200点 | 200点 |
| 旭川医科大学 | 150点 | 150点 | 150点 | 50点 |
※2027年度入学者選抜要項に基づく。理科はいずれも2科目。科目の選択方法や共通テストの換算方法は大学ごとに異なる。
重要なのは、旭川医科大学が2027年度から個別試験に理科2科目を追加することである。
これに伴い、旭川医科大学の総配点は2026年度の920点から970点へと変更される。
また、札幌医科大学では個別試験等800点のうち面接が200点を占める。学力試験とともに、面接の評価も重要になる。
入試の難しさを考える際には、大学が公表する合格最低点や平均点も参考になる。
2026年度一般選抜・前期日程の実績は次のとおりである。
| 大学 | 志願者 | 合格者 | 合格最低点 | 合格者平均点 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道大学 | 229人 | 87人 | 684.25 / 840点 | 714.62 / 840点 |
| 札幌医科大学 | 214人 | 75人 | 1,065.5 / 1,550点 | 1,161.5 / 1,550点 |
| 旭川医科大学 | 273人 | 48人 | 650.6 / 920点 | 681.7 / 920点 |
※2026年度入学者選抜の大学公表値。大学ごとに試験科目・配点・選抜方式が異なるため、得点率をそのまま比較して難易度を順位づけすることはできない。
例えば、2026年度の旭川医科大学医学科前期日程では273人が志願した一方、実際の受験者は145人、合格者は48人だった。
募集人員48人に対する志願倍率は約5.7倍だが、受験者数を合格者数で割った実質倍率は約3.0倍となる。
医学部では共通テストの成績に基づく第1段階選抜が実施される場合もあり、志願者全員が個別試験を受験するとは限らない。
北海道大学医学科の2026年度前期日程では、合格者の共通テスト平均素点は863.01点だった。
旭川医科大学では、合格者の共通テスト平均得点率が78.8%と公表されている。
北大の863.01点は換算前の素点であり、旭川医科大学の78.8%は大学独自の配点による得点率であるため、同条件の数字ではない。
また、いずれも合格者平均であって、合格に必要な最低点ではない。
旭川医科大学は2027年度から科目・配点が変更されるため、2026年度の合格最低点を翌年度の得点目標にそのまま用いることもできない。
北海道大学医学部医学科は札幌市にあり、臨床医の養成とともに医学研究にも力を入れている。
2027年度の入学定員は100名で、一般選抜のほか、募集5名のフロンティア入試も設けられている。
フロンティア入試では、調査書、活動実績、自己推薦書、課題論文、面接、共通テストなどを用いて総合的に選抜する。
出願には、物理・化学・生物のうち所定の2科目を履修していることなどの要件がある。
また、北海道大学には入学時に学部を決めない総合入試(理系)があるが、総合入試から医学部医学科へ移行することはできない。
医師を目指す場合には、医学科を募集する選抜で受験する必要がある。
札幌医科大学は、札幌市にある公立の医科大学である。
北海道の地域医療を担う医師の養成に取り組んでおり、入試区分によって卒業後の研修・勤務条件が異なる。
2027年度入試の主な募集区分は次のとおりである。
| 入試区分 | 募集人員 |
|---|---|
| 一般選抜・一般枠 | 20名 |
| 一般選抜・札医大卒後研修枠 | 55名 |
| 総合型選抜・道民枠 | 20名 |
| 学校推薦型選抜・特別枠 | 15名 |
※特別枠の人数には臨時増員予定分が含まれる。最終的な募集人員は最新の大学発表による。
一般枠と札医大卒後研修枠には、出身地や出身高校の所在地による制限はない。
一方、道民枠は、原則として道内の高校等を卒業した者・卒業見込みの者で、最終学年を含め3年以上継続して北海道内に在住していることなどが条件となる。
特別枠も道内高校等の出身者を対象とし、居住歴に加えて学校長の推薦や評定などの条件がある。
卒業後の進路に関する条件も、入試区分によって異なる。
一般枠には、特定の卒後必修プログラムへの従事義務はない。
札医大卒後研修枠と道民枠では、原則2年間の初期臨床研修を経た後、7年間にわたって札幌医科大学の診療科等に所属し、大学や道内の医療機関等で研修・診療に従事する条件がある。
特別枠では、道内で9年以上勤務し、そのうち5年以上を知事指定の公的医療機関等で研修・勤務することなどが求められる。さらに、その5年間のうち3年間については、小規模病院や医師少数区域の指定医療機関等で勤務する条件も設けられている。
同じ医学部でも、どの区分で入学するかによって、受験できる人も、卒業後の進路に関する条件も異なるのである。
札幌医科大学は2026年10月2日に、2028年度入学者選抜の変更を予告した。
| 入試区分 | 2027年度 | 2028年度予定 |
|---|---|---|
| 一般選抜・一般枠 | 20名 | 50名 |
| 一般選抜・札医大卒後研修枠 | 55名 | 廃止 |
| 総合型選抜・道民枠 | 20名 | 45名 |
| 学校推薦型選抜・特別枠 | 変更なし | 変更なし |
※2028年度の変更は予告段階。出願資格や選抜方法等の詳細は2027年6月公表予定の入学者選抜要項で示される。
札医大卒後研修枠が廃止され、道民枠が大幅に増える予定である。
今後受験する中高生は、2027年度までの制度をそのまま前提にしないようにしたい。
旭川医科大学は、旭川市にある国立の医科大学で、北海道の地域医療への貢献を重視している。
2027年度医学科の主な募集区分は次のとおりである。
| 入試区分 | 募集人員 |
|---|---|
| 一般選抜・前期日程 | 48名 |
| 総合型選抜・北海道特別選抜 | 40名 |
| 学校推薦型選抜・道北・道東特別選抜 | 7名 |
※別途、第2年次編入学の制度もある。特別選抜で欠員が生じた場合、一般選抜の募集人員に加えられることがある。
北海道特別選抜は、道内の高校等を卒業した者・卒業見込みの者を対象としている。
2027年度入試では、高校の評定平均値4.0以上、北海道の医療に貢献する意思、合格した場合の入学確約などが条件となる。
一方、道北・道東特別選抜は、さらに対象が限定される。
対象となるのは、道北・道東や北空知・中空知の指定地域で育ち、将来その地域の医療に貢献する意思を持つ者である。
2027年度入試では、評定平均値4.3以上が必要となり、学校長の推薦も求められる。
また、「生まれ育った地域」は、小・中・高校等のいずれかで教育を受けた経験があり、保護者が基準日時点で継続して3年以上居住している地域として定義されている。
対象地域からは、旭川市などを含む上川中部が除外されている。
したがって、道北・道東特別選抜は、単に北海道出身であるだけでは出願できない。
北海道特別選抜と道北・道東特別選抜では、卒業後の研修先や所属についても条件がある。
大学の公式説明によると、原則として旭川医科大学病院で2年間の初期臨床研修を受ける。
また、2023年度以降の入学者については、初期臨床研修修了後に大学の講座または附属病院の診療科に所属し、7年以上、大学および関連施設で医学・医療に従事することとなっている。
大学は地域枠入試について「就職先を指定するものではありません」とも説明しているため、これらの条件を特定地域への配属義務と混同しないようにしたい。
北海道内3大学の一般選抜では、大学入学共通テストで国語、数学、理科、外国語、地理歴史・公民、情報などが必要となる。
個別試験でも数学・理科・外国語が課されるため、高校段階から幅広い学力が求められる。
特に注意したいのが理科の科目選択である。
3大学とも一般選抜では理科2科目を使うが、総合型選抜などでは高校での履修要件が別に定められている場合がある。
また、個別試験の数学では数学Ⅲ・数学Cを含む範囲への対応が必要となる。
北海道大学のフロンティア入試のように、一般選抜とは別の出願資格が設けられている制度もある。
高校の文理選択や理科科目の選択を決める前に、志望大学の一般選抜だけでなく、総合型選抜・学校推薦型選抜の条件も調べておきたい。
北海道内の3大学はいずれも国公立大学であり、公式サイトや規程で公表されている入学料・授業料は次のとおりである。
| 大学 | 入学料 | 年間授業料 |
|---|---|---|
| 北海道大学 | 282,000円 | 535,800円 |
| 札幌医科大学 | 282,000円 | 535,800円 |
| 旭川医科大学 | 282,000円 | 535,800円 |
※各大学の公表額・規程掲載額による。旭川医科大学の学費案内には2025年度額と明記されているため、実際に入学する年度の適用額を確認する必要がある。
この金額が6年間変わらないと仮定すると、入学料と授業料の合計は3,496,800円となる。
医学部では教科書代、試験費用、実習関連費なども必要になる。自宅外通学の場合は家賃や生活費も加わるため、卒業までの総費用を考えておきたい。
北海道には、卒業後の勤務条件を満たすことで返還が免除される修学資金制度がある。
例えば、2026年度の北海道大学医学部医学科入学者向け制度では、次の金額が貸し付けられる。
| 項目 | 貸付額 |
|---|---|
| 入学料 | 282,000円 |
| 授業料 | 年額535,800円 |
| 生活費 | 月額120,000円 |
| 6年間の貸付総額 | 12,136,800円 |
約1,214万円の貸付けを受けられるが、最初から返還不要の給付金として支給されるわけではない。
返還免除には、卒業後9年間のうち5年間、北海道知事が指定する道内の公的医療機関等で勤務することなどが必要となる。
残る4年間についても、道内の臨床研修病院等で研修する仕組みである。
具体的な配置先は、本人や大学講座等の意向も踏まえながら北海道が決定する。
返還免除の条件を満たさない場合には、原則として貸付金全額に違約金を加えて返還する必要がある。
北海道の制度では、貸付時点からの期間に応じて年10%の割合で違約金を計算する規定があり、単純に貸付総額の10%を上乗せする仕組みではない。
北海道が公表している制度の手引きには、6年間貸付けを受けた場合の違約金が約400万円になるという試算例も掲載されている。
また、実際に地域勤務を行った期間が長くても、途中で返還義務が生じた場合に、その勤務期間に比例して貸付元金が減額される仕組みではない。
約1,214万円の貸付けを受け、さらに違約金が発生する場合、返還負担は相当大きくなる。
医学部進学時点では、将来の専門診療科や生活拠点が決まっていない人も多いだろう。
修学資金を利用する際には、支援額だけでなく、卒業後の勤務条件と、条件を守れなくなった場合の経済的負担も確認しておきたい。
地域枠は、地域医療を担う医師の確保を目的とした入試区分などを指す。
一方、修学資金は在学中に費用の貸付けを受け、卒業後に所定の条件を満たすことで返還が免除される制度である。
両者が結びついている場合もあるが、同じ仕組みではない。
例えば北海道大学では、2026年度に医学科入学者を対象として、大学入試とは別に修学資金の貸付希望者を募集している。
これに対して札幌医科大学や旭川医科大学では、入試区分そのものに卒後の研修・所属条件が設けられている場合がある。
入試区分に伴う卒後義務と、修学資金の返還免除条件は、それぞれ確認する必要がある。
北海道には札幌市のように医療機関が集まる地域がある一方、医師の確保が難しい地域もある。
北海道の医師確保計画でも、地域間の医師偏在への対応が重要な課題となっている。
医学部が札幌市や旭川市にあるからといって、卒業後もその地域で働くとは限らない。
特に地域医療に関係する入試区分や修学資金を利用する場合には、道内の特定の医療機関での研修や勤務が求められることもある。
どの大学へ進むかを考える段階から、卒業後にどこで働きたいのか、その希望と制度上の条件が合っているかを確認しておきたい。
医師は高度な専門性と高い収入を持つ一方、資格取得までに長い期間が必要で、卒業後も研修や専門的な学習が続く。
同じ医師でも、診療科や勤務先によって収入や勤務条件は大きく変わる。
北海道内の医学部3校についても、入試科目や配点、総合型選抜・学校推薦型選抜の出願資格、卒業後の研修条件には違いがある。
高校段階では、まず医学部入試に対応できる学力を身につけることが重要になる。
そのうえで、どの入試区分を利用できるのか、修学資金を借りるか、卒業後にどの地域で研修し、働きたいのかを考えておきたい。
医学部への合格は、医師としての長い職業生活の出発点である。
どの大学に進むかという選択が、卒業後の進路にどのような影響を与えるのか。そこまで見通したうえで進学先を決めたい。
進学教室FiveSchools
2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。
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