NANAIRO DAYS
2026.10.18
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成している。収入は主に厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」に掲載された全国の統計値を使用した。資格制度、勤務条件、学費等は変更される場合があるため、進路選択にあたっては最新の公式情報を確認してほしい。
医療の仕事と聞いて、最初に思い浮かべるのは医師や看護師だろう。
しかし、病院ではそれ以外にも多くの専門職が働いている。
薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士。名前は聞いたことがあっても、それぞれの仕事の違いまでは知らない人も多いのではないだろうか。
同じ医療現場で働いていても、必要な資格、給料、夜勤の有無、将来の需要は異なる。医療職を目指すなら、仕事の内容とともに、収入や生活への影響も知っておきたい。
今回は、代表的な医療職について、年収、働き方、資格取得までの費用、将来性を比較する。
まずは、代表的な医療職を整理してみよう。
| 分野 | 主な職業 | 仕事内容 |
|---|---|---|
| 診断・治療 | 医師 | 診察、診断、治療、手術など |
| 歯科医療 | 歯科医師 | 歯や口の診断・治療 |
| 看護 | 看護師 | 患者の療養上の世話、診療の補助 |
| 保健・出産 | 保健師、助産師 | 保健指導、出産の介助など |
| 薬 | 薬剤師 | 調剤、服薬指導、医薬品の管理 |
| 検査 | 臨床検査技師 | 血液検査、心電図・超音波検査など |
| 画像診断 | 診療放射線技師 | X線撮影、CT、MRIなどの検査 |
| 医療機器 | 臨床工学技士 | 人工呼吸器、人工透析装置などの操作・管理 |
| リハビリ | 理学療法士 | 運動や身体機能の回復を支援 |
| リハビリ | 作業療法士 | 日常生活や社会生活への復帰を支援 |
| リハビリ | 言語聴覚士 | 言語・聴覚・飲み込みの問題に対応 |
| 歯科予防 | 歯科衛生士 | 歯科予防処置、診療の補助、保健指導 |
| その他 | 視能訓練士、管理栄養士など | 視機能の検査・訓練、栄養管理など |
例えば、一人の患者が手術を受ける場合でも、医師と看護師だけで治療が完結するとは限らない。
臨床検査技師は血液などを検査し、診療放射線技師は画像検査を担当する。薬剤師は薬の管理や確認を行い、臨床工学技士は生命維持管理装置を扱う。
手術後には、理学療法士や作業療法士がリハビリを担当することもある。
また、医療職の勤務先は病院だけではない。薬剤師は薬局や企業、管理栄養士は学校や福祉施設などでも働いている。
医療職は高収入というイメージがあるが、実際には職種によって大きな差がある。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」に掲載された全国の平均年収を見てみよう。
| 職種 | 全国平均年収 |
|---|---|
| 医師 | 1,512.3万円 |
| 歯科医師 | 1,062.7万円 |
| 薬剤師 | 566.8万円 |
| 診療放射線技師 | 556.5万円 |
| 保健師 | 551.4万円 |
| 看護師 | 524.7万円 |
| 臨床検査技師 | 482.0万円 |
| 理学療法士・作業療法士等 | 443.6万円 |
| 歯科衛生士 | 396.0万円 |
※厚生労働省「job tag」に掲載された令和7年賃金構造基本統計調査に基づく全国値。複数の職業紹介ページで同一の賃金統計区分が使用されている場合があり、すべての資格職について個別の平均年収が算出されているわけではない。また、診療科別・勤務先別・年齢別の収入差を示すものではない。
医師と歯科医師の平均年収が突出している一方、その他の医療職は400万~500万円台が中心となっている。
もっとも、平均年収には、働く人の年齢や勤続年数、夜勤手当、残業代など、さまざまな要素が反映されている。
例えば同じ看護師でも、夜勤のある病棟と日勤中心の診療所では、給与の構成が異なる。
また、平均年収は新卒の初任給ではない。実際の収入を考えるには、働き始めたときの給与や、勤務条件にも目を向ける必要がある。
日本看護協会の「2025年病院看護実態調査」では、看護師の給与について次の数字が公表されている。
| 区分 | 基本給与額(月額) | 税込給与総額(月額) |
|---|---|---|
| 新卒・3年課程卒 | 216,416円 | 285,078円 |
| 新卒・大学卒 | 221,883円 | 292,527円 |
| 勤続10年・非管理職 | 254,286円 | 340,278円 |
※全国の調査回答病院の平均。税込給与総額は、二交代制なら月4回、三交代制なら月8回の夜勤を行うなど、一定の勤務条件を想定した税引前の給与である。夜勤手当、通勤手当、住宅手当等を含むが、時間外手当・賞与は含まない。
大卒と3年課程卒の新卒看護師では、基本給与額の差は月5,467円である。
一方、夜勤などを想定した税込給与総額は、基本給よりも6万~8万円以上高い。
このように、給与を比較するときには、基本給と各種手当を区別することが重要になる。
また、勤続10年の看護師の平均基本給与額は新卒看護師より高いが、これは異なる集団の平均値である。同じ人が10年間でどれだけ昇給したかを示しているわけではない。
同じ調査では、2025年9月の一般病棟において、1か月の夜勤時間が72時間を超えた看護職員は33.9%だった。
これは夜勤として勤務した時間の合計であり、月の総労働時間ではない。
一方、看護職員確保のため「日勤のみ」の勤務形態を導入している病院も54.7%あった。
この54.7%は病院の割合であり、看護師の半数以上が日勤だけで働いているという意味ではない。
看護師の収入と勤務負担は、勤務先や配属先によって大きく変わるのである。
医療系の仕事を選ぶうえで、休日や勤務時間は重要な判断材料になる。
例えば、24時間患者を受け入れる病院と、平日の日中に診療を行うクリニックでは、働き方が大きく違う。
| 職場の例 | 働き方の特徴 |
|---|---|
| 入院病棟 | 看護職員などは夜勤・交代勤務がある |
| 救急病院 | 夜間・休日の診療や緊急対応がある |
| 外来中心の診療所 | 診療時間に合わせた勤務が中心 |
| 調剤薬局 | 店舗の営業時間に応じた勤務 |
| リハビリ施設 | 休日・勤務時間は施設によって異なる |
| 健診施設 | 日中の検査業務が中心となる職場もある |
「土日に休めるか」と「年間休日が何日あるか」は別の問題である。
土日に出勤して平日に休む交代勤務でも、年間休日が多い職場はある。反対に、夜勤がなくても土曜日に診療するクリニックなどでは、週末の休み方が異なる。
夜間勤務があるのは看護師だけではない。医師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士などにも、救急対応や当直、オンコールを担当する職場がある。
オンコールとは、勤務時間外に呼び出しに対応できるよう待機する働き方のことである。
実際の勤務条件を知るには、年間休日、有給休暇の取得状況、夜勤・当直の回数、時間外労働、オンコールの有無などを確認したい。
職種全体の平均労働時間よりも、希望する勤務先の具体的な条件が重要になる場合も多い。
医師の平均年収は、ほかの医療職より高い。
一方、医学部で6年間学んだ後も、原則2年間の臨床研修があり、さらに専門研修へ進む医師も多い。
勤務医の場合、診療科や勤務先によっては夜間・休日の診療や当直が発生する。
2024年4月には、勤務医の時間外・休日労働について上限規制が導入された。
原則的な上限水準は年間960時間だが、一定の指定を受けた医療機関には年間1,860時間の特例的な上限水準も設けられている。
医師全員がその時間まで働いているわけではないものの、長時間労働が政策上の課題になっていることを示す数字である。
医師の収入と働き方については、次回の記事で詳しく紹介する。
医療系の資格を取得するには、大学や養成施設などで所定の教育を受け、国家試験の受験資格を得る必要がある。
代表的な資格取得ルートを整理すると、次のようになる。
| 職業 | 主な養成課程 |
|---|---|
| 医師 | 医学部6年+卒後の臨床研修など |
| 歯科医師 | 歯学部6年+卒後の臨床研修など |
| 薬剤師 | 6年制の薬剤師養成課程 |
| 看護師 | 3年制養成所、4年制大学など |
| 臨床検査技師 | 3年以上の養成課程など |
| 診療放射線技師 | 3年以上の養成課程など |
| 臨床工学技士 | 3年以上の指定養成課程など |
| 理学療法士・作業療法士 | 3年以上の養成課程など |
| 言語聴覚士 | 高卒後3年以上の養成課程など複数ルート |
| 歯科衛生士 | 3年以上の養成課程 |
※代表例であり、学歴や既修得科目によって別の資格取得ルートがある職業もある。
例えば、看護師には3年制の専門学校と4年制大学という選択肢がある。
一方、薬剤師になるための一般的な進路は6年制薬学部であり、4年制薬学部を卒業するだけでは薬剤師国家試験の受験資格は得られない。
進学先を選ぶ際には、学部・学科名だけでなく、どの資格を取得できる課程なのかを確認する必要がある。
医療系の進学では、資格取得までの年数とともに学費も重要な問題になる。
北海道医療大学が公表している学納金総額を例にすると、次のようになる。
| 学科 | 修業年限 | 学納金総額 |
|---|---|---|
| 薬学科 | 6年 | 1,170万円 |
| 歯学科 | 6年 | 2,700万円 |
| 看護学科 | 4年 | 640万円 |
| 理学療法学科 | 4年 | 630万円 |
| 作業療法学科 | 4年 | 610万円 |
| 言語聴覚療法学科 | 4年 | 600万円 |
| 臨床検査学科 | 4年 | 620万円 |
※大学公式学費案内の掲載額。教科書代、実習関係費、生活費など、学納金以外の費用は別途必要となる場合がある。
これに対し、北海道大学の2026年度の学部授業料は年間535,800円、入学料は282,000円である。
仮に6年間授業料が変わらなければ、入学料と授業料の合計は約350万円となる。
これは現行額に基づく試算であり、授業料が6年間固定されるという意味ではない。
また、大学によって奨学金や授業料減免制度も異なるため、実際の自己負担額まで比較する必要がある。
医療系の進学では、奨学金や修学資金の制度にも目を向けたい。
北海道には、卒業後に指定された医療機関などで一定期間働くことで、貸付金の返還が免除される制度がある。
例えば「北海道医師養成確保修学資金制度」では、医学部在学中の入学料・授業料と月額12万円の生活費について、6年間で合計約1,214万円の貸付けを受けられる。
返還免除を受けるには、卒業後9年間のうち5年間、知事が指定する道内の公的医療機関等で勤務することなどが条件となる。残る4年間についても、道内の臨床研修病院等での研修が制度に組み込まれている。
条件を満たさない場合は、原則として貸付金に10%の違約金を加えて返還する必要がある。
看護職員向けにも「北海道看護職員養成確保修学資金」がある。
2026年度の一般修学資金では、卒業後に必要な免許を取得し、指定された道内の施設で貸付期間の1.5倍の年数(端数切り上げ)にわたって勤務することなどが、返還免除の条件となっている。
対象施設には病院のほか、診療所や訪問看護事業所なども含まれる。
ただし、看護師が一般修学資金の返還免除を受ける場合、病院については病床数や所在地による制限があり、札幌市・旭川市・函館市の病院は対象外となる。診療所や訪問看護事業所などは別の条件で定められているため、施設の種類ごとに確認する必要がある。
これらの制度は、学費の負担を軽減できる一方、卒業後の勤務先や勤務年数に条件が付く。
特に、札幌市内で働くことを強く希望する人は、返還免除の対象となる勤務先を慎重に確認しておきたい。
医療職には国家資格を必要とする仕事が多い。
しかし、資格を取得した人の数と、医療現場で必要とされる人数の関係は、職種によって異なる。
厚生労働省が令和2年度時点で行った薬剤師の需給推計では、2045年の全国の薬剤師について、供給数は43.2万~45.8万人、需要数は33.2万~40.8万人と予測されている。
この推計では、長期的に薬剤師の供給が需要を上回る可能性が示されている。
その一方、病院薬剤師の不足や地域間の偏りも課題となっている。
全国の薬剤師数が十分でも、特定の地域や医療機関で人材が不足することはあり得る。
なお、これは令和2年度時点の推計であり、厚生労働省は2026年度中に再算出する予定としている。
厚生労働省の検討会では、2040年ごろに理学療法士・作業療法士の供給数が需要数の約1.5倍になるという推計が報告されている。
これは2022年に公表された一定の条件に基づく推計であり、将来の就職難を確定するものではない。
ただし、高齢化が進めばリハビリ職の需要も増え続けると考えるのは早計である。働く人の数が需要を上回る可能性も、進路選択の材料として知っておきたい。
看護師は病院のほか、訪問看護、介護施設、地域での療養支援など、多様な職場で働いている。
日本看護協会の2025年病院看護実態調査によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%、新卒採用者の離職率は8.4%だった。
こうした数字からも、看護職員の確保には新たな人材の養成とともに、働き続けられる環境づくりが重要であることが分かる。
北海道で医療職を目指す場合、札幌市内と道内のその他の地域では、医療機関の分布や人材確保の事情が異なる。
北海道の「北海道医療計画(2024~2029年度)」でも、医療従事者の確保が課題とされている。
また、北海道の医師確保計画では、地域間の医師偏在への対応が重要な政策課題となっている。
札幌市内だけで就職先を探す場合と、道内各地での勤務を検討できる場合では、選択できる職場の範囲も変わる。
先ほど紹介した修学資金制度のように、特定地域で働くことが金銭的な支援の条件になる場合もある。
進学先を決める段階から、卒業後にどの地域で働きたいのかを考えておく価値がある。
医療でも、AIや自動化技術の導入が進んでいる。
画像診断の支援、検査データの処理、医薬品の管理、診療記録の作成支援など、効率化が期待される業務は多い。
日本看護協会の2025年病院看護実態調査では、看護記録の作成支援にAIやICTを導入している病院は5.6%、導入を検討している・関心がある病院は49.9%だった。
今後、医療職の仕事内容が変化していくことは十分に考えられる。
例えば、画像の分析が高度に自動化されれば、診療放射線技師には検査の安全管理や患者への対応など、別の側面での専門性がより重要になる可能性がある。
薬剤師についても、調剤業務の効率化が進む一方、薬の適切な使用を支援する役割が重視されると考えられる。
将来性を考える際には、職業がなくなるかどうかという二択ではなく、その仕事に求められる能力がどう変化するかを見ておきたい。
医療系の進路では、大学や学部を選ぶことが、取得できる資格や将来の仕事内容に直結する場合が多い。
例えば、理学療法士と臨床検査技師では、どちらも医療職であるものの、必要な教育課程や国家試験は異なる。
そのため、進学先を決める前に、まず希望する職業と必要な資格を確認しておくことが重要になる。
また、同じ資格を取得しても、勤務先によって収入や休日、夜勤の有無は変わる。
進学費用が高額になる場合には、学費と将来の収入の関係も考えておきたい。修学資金の返還免除制度を利用するなら、卒業後の勤務条件も進路選択の一部になる。
医療系の大学・学科を選ぶ際には、取得できる資格、仕事内容、勤務条件、収入、進学費用、将来の需要を一つずつ確かめたい。
次回以降は、医師、看護師、その他の医療職について、北海道内の大学・養成校と具体的な進路を紹介する。
進学教室FiveSchools
2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。
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