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北海道人の大学選び⑦ 公務員という職業

※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成している。採用制度、給与、勤務条件等は変更される場合がある。

前回の記事では、北海道で公務員を目指すための大学選びや採用試験について紹介した。

→ 【北海道人の大学選び】公務員② 北海道で公務員になる

では、公務員になった後の生活は、実際にどのようなものなのだろうか。

公務員には「安定している」「地元で働ける」「民間企業より仕事が楽そう」といったイメージがある。

確かに、正規の公務員には法律上の身分保障があり、雇用や収入の見通しを立てやすい。

しかし、北海道庁と札幌市役所では転勤の範囲が異なり、同じ市役所でも採用条件や給与に違いがある。

また、北海道電力、ホクレン、北洋銀行などの民間企業と比較すると、公務員だけが安定した就職先というわけでもない。

今回は、具体的な数字や事例を使いながら、公務員として働くことの利点と制約を考えてみたい。

なお、本記事でいう公務員は、原則として採用試験を経て任用される正規職員を指す。自治体には、一会計年度以内の任期で働く「会計年度任用職員」もいるが、任用制度や雇用の安定性が異なるため、ここでは扱わない。

公務員は本当に安定している?

正規の公務員には法律上の身分保障がある。民間企業のように勤務先の倒産によって職を失う心配も、基本的にはない。

しかし、雇用が安定していることと、本人がその仕事を長く続けたいと思えることは別問題である。

北海道庁では、若手職員の転職希望が少なくない

北海道の人事委員会が2025年に公表した資料によると、40歳未満の一般行政職員の年間自己都合退職率は、2020年度の2.6%から2023年度には4.0%となり、2024年度は3.2%だった。

また、職員アンケートでは、回答者6,710人のうち33.0%、40歳未満では38.3%が転職を考えていると回答した。

では、何が不満なのだろうか。

転職を考える理由回答割合
転勤がある・多い50.8%
給与が職責に見合わない40.3%
仕事量・残業が多い34.1%
能力・実績が処遇に反映されない32.4%

※転職を考えている40歳未満の職員を対象とする複数回答。退職者本人への調査ではない。また、転職意向と実際の退職率は対象集団・集計方法が異なるため、直接比較できない。

出典:北海道「令和7年報告及び勧告・公務運営に関する報告」

最も多かったのは、給与でも残業でもなく、転勤だった。

北海道庁では、札幌の本庁から道内各地の振興局などに異動することがある。

例えば、配偶者が札幌で働いている場合、道北や道東への転勤によって、単身赴任するか、家族の誰かが仕事を変えるかといった問題に直面するかもしれない。

共働き世帯にとって、本人の勤務先の都合で生活拠点が変わることは、以前より受け入れにくくなっているのではないだろうか。

これは調査結果から考えられる仮説だが、広域転勤が若手道職員の転職検討理由として重要であることは、公式資料から確認できる。

また、給与への不満も、単に金額が低いという話ではない。

アンケートで挙げられているのは、給与が「職責に見合わない」という不満である。

仕事内容や責任の重さに対して十分な待遇を得られていない、あるいは自分の能力や実績が処遇に反映されにくいと感じる職員がいることもうかがえる。

市役所なら事情は違う

一方、市役所の行政職では、通常はその自治体の区域内での異動が中心になる。

札幌市職員なら、部署が変わっても札幌で暮らし続けられる場合が多い。

しかし、転居を伴う転勤が少なければ、若手職員が辞めなくなるというわけではない。

2026年7月、北海道新聞は、北見市で2025年度に48人の職員が退職し、直近5年間で最多になったと報じた。退職者の半数以上は20~30代だったという。

北見市では、財政難を背景に2025年度から3年間の給与据え置きも決まっていた。

出典:北海道新聞「北見市職員退職、25年度最多48人」(2026年7月3日)

この数字は若手職員全体の離職率を示すものではなく、給与据え置きが退職増加の主因だと確認されたわけでもない。

一方、全国の自治体職員に関する研究では、職場の人間関係や仕事内容への期待と現実の違いなどが、離職に関係することも指摘されている。

出典:山梨総合研究所「若手自治体職員の早期離職をめぐる問題」

例えば、地域のまちづくりに関わりたいと思って市役所に入ったものの、実際には希望と異なる部署に配属されることもあるだろう。

部署異動によって幅広い業務を経験できることには利点があるが、希望する仕事を長く続けたい人にとっては、必ずしも望ましい仕組みとは限らない。

もちろん、こうした問題は民間企業にも存在する。

公務員だから特別に仕事が大変だとは言えないが、逆に「公務員なら仕事が楽」というイメージも適切ではない。

北海道庁のアンケートでも、転職を考える若手職員の34.1%が仕事量や残業を理由に挙げている。

もっとも、残業時間だけで仕事の大変さが決まるわけではない。住民対応や災害対応、議会対応など、公務員の仕事にもさまざまな責任や負担がある。

公務員は職を失いにくいという意味では安定している。しかし、希望する仕事を続けられることや、働きやすい職場に配属されることまで保証されているわけではない。

北海道の民間大手と比べるとどうか

公務員の安定性を考えるなら、北海道の有力民間企業とも比較したい。

例えば、北海道大学や小樽商科大学などから就職先を考える場合、北海道電力、ホクレン、北洋銀行なども有力な選択肢となるだろう。

これらは北海道でも有力な就職先であり、民間企業全体を代表するものではない。しかし、公務員と民間企業の両方を志望する学生にとっては、比較する意味のある企業である。

北海道電力と北洋銀行の2026年3月期有価証券報告書によると、従業員の平均年収と平均勤続年数は次のとおりである。

企業平均年収平均勤続年数
北海道電力827.6万円18.2年
北洋銀行740.0万円19.1年

※提出会社単体の数値。平均年収には賞与等が含まれ、若手だけではなく管理職を含む全従業員が対象。

出典:北海道電力・有価証券報告書、北洋銀行・IR情報

また、ホクレンは2015~2025年入会者の3年以内離職率を7.6%と公表している。

出典:ホクレン「数字で見る職場環境」

平均勤続年数は若手の離職率を示すものではなく、ホクレンの3年以内離職率と北海道庁の年間自己都合退職率を直接比較することもできない。

それでも、北海道の有力民間企業にも、長く勤める人が多い職場があることは分かる。

給与についても、公務員が必ず有利というわけではない。

公務員の給与は採用先の制度によって異なり、北海道庁、札幌市役所、近郊の市役所でも同じではない。

北海道は、2025年4月時点の道内市町村の給与を一覧にした資料を公開している。

出典:北海道「市町村における職員数及び給料等の概要」

平均給与は職員の年齢構成や手当の違いにも左右されるため、単純な金額の比較だけで待遇の良し悪しは判断できない。

また、民間企業の平均年収と、公務員の平均給与月額は、賞与の扱いが異なるため直接比較できない。

重要なのは、「収入が安定していること」と「収入が高いこと」は別だという点である。

公務員には法律上の身分保障がある。一方、北海道の有力民間企業にも、高い給与水準や長期勤続の実績がある。

就職先を考える際には、雇用の安定性だけでなく、収入や仕事内容、勤務場所も合わせて比較したい。

札幌に住み続けたいなら、どこを目指す?

北海道で働くことと、札幌で暮らし続けることは同じではない。

北海道庁では道内各地への転勤がある。

北海道電力やホクレンにも道内外の拠点があり、北洋銀行についても採用コースや配属先によって転勤範囲が異なる。

一方、札幌市役所の行政職なら、札幌市内での勤務が中心となる。

では、札幌で暮らし続けたい人は、札幌市役所だけを目指すべきなのだろうか。

小樽市、江別市、石狩市、北広島市、恵庭市など、札幌からの通勤を考えられる自治体もある。

しかし、採用後の居住条件には注意が必要である。

例えば、石狩市の2026年度採用試験では、共通の受験資格として「採用後に石狩市内に居住可能な方」という条件が設けられていた。

江別市の2026年度一般事務職採用試験でも、採用後に市内居住が可能なことが条件となっている。

出典:石狩市・令和8年度採用試験案内、江別市・職員採用情報

こうした文言が実際にどのように運用されるかは、各自治体への確認が必要である。

少なくとも、札幌から通勤できる距離にあるというだけで、札幌に住み続けられると決めつけるべきではない。

近郊の市役所なら入りやすい?

札幌市役所の採用試験が難しいと考え、近郊の市役所を併願する人もいるだろう。

ところが、実際の採用試験の結果を見ると、近郊自治体が必ずしも入りやすいわけではない。

自治体・試験区分対象年度倍率
札幌市・大卒行政(一般方式)2026年度実施5.7倍
小樽市・事務(前期)2025年度実施14.7倍
小樽市・事務(後期)2025年度実施11.7倍
江別市・一般事務(大学の部)2025年度実施14.5倍
北広島市・事務上級2025年度採用試験21.3倍
恵庭市・事務職2025年度実施12.7倍

※採用先・年度によって試験方式が異なる。また、受験者数に対する最終合格者数と採用者数が混在するため、厳密な難易度比較ではない。北広島市は公式「過去の職員採用情報」に掲載された最終合格者6人に基づく。

出典:札幌市・試験実施状況、小樽市・採用試験情報、北広島市・過去の職員採用情報、江別市・職員採用情報

この表から、近郊の市役所では、札幌市より高い採用倍率となる例があることが分かる。

もっとも、倍率の高さと合格に必要な学力の高さは同じではない。試験内容も受験者の構成も異なるからである。

また、小規模な自治体では、採用人数が数人変わるだけでも倍率が大きく変動する。

したがって、「札幌市役所が難しそうだから、近郊の市役所を滑り止めにする」という考え方は、必ずしも適切ではない。

希望する仕事内容、居住条件、採用人数、試験方式なども調べたうえで、併願先を決めたい。

公務員には、副業の制約もある

公務員は、原則として副業が禁止されている。

地方公務員法第38条では、任命権者の許可なく営利事業を営んだり、報酬を得て事業や仕事に従事したりすることが制限されている。

実際、勤務時間外の副業によって懲戒処分を受けた事例がある。

塾講師のアルバイト

2026年7月、北海道釧路市の20代の消防職員が、勤務時間外に無許可で塾講師の仕事をして報酬を受け取ったとして、減給10分の1・1か月の懲戒処分を受けたと報じられた。

知人から依頼された仕事だったという。

出典:消防情報館「釧路市消防で無許可の塾講師副業」(2026年9月1日)

運転代行のアルバイト

2024年2月、兵庫県小野市の消防職員が、非番の日に運転代行会社で働いていたとして、減給10分の1・5か月の懲戒処分を受けた。

2023年4月から2024年2月まで週1~2回勤務し、月に約5万円の報酬を得ていたという。

本人は、人手不足なので手伝ってほしいと頼まれ、軽い気持ちで引き受けたと説明している。

出典:神戸新聞「50歳消防職員が非番の日に副業、運転代行で月5万円稼ぐ」(2024年2月22日)

いずれも、勤務時間外の仕事が問題になった事例である。

一般の会社員なら、就業規則などの条件を満たしたうえで副業が認められる場合もある。しかし、正規の公務員の場合は、法律によって兼業そのものが制限されている。

近年は、一部の兼業について許可の範囲を広げる動きもある。

しかし、それは自由にアルバイトや事業経営ができるようになったという意味ではない。

安定した給与を得られる一方、自分で別の収入源を作ろうとする際には、民間企業とは異なる法律上の制約がある。

将来、副業や独立にも挑戦したいと考えている人にとって、無視できない違いだろう。

出典:地方公務員法第38条

自分が求める「安定」とは何か

公務員には、法律上の身分保障があり、雇用や収入の見通しを立てやすいという大きな利点がある。

しかし、それは仕事内容が楽であることや、希望する場所で働き続けられることまで意味しない。

北海道庁では広域転勤が若手職員の転職検討理由として重要になっている。一方、市役所では転勤の範囲が狭くても、仕事内容や職場環境など別の問題が生じ得る。

また、札幌近郊の市役所には採用倍率が高いところもあり、居住条件に注意が必要な自治体もある。

そして、北海道の有力民間企業にも、高い給与水準や長期勤続の実績がある。

結局のところ、「公務員は安定している」という一般論だけでは、進路選択の答えにはならない。

自分が求めているのは、失業のリスクが小さいことなのか。高い収入なのか。札幌で暮らし続けられることなのか。それとも、仕事以外の活動にも自由に挑戦できることなのか。

大切なのは、公務員という肩書きではなく、自分が望む生活を実現できる就職先かどうかである。

進学教室FiveSchools

2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。

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