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【教育TOPICS】北海道人の大学選び① 文学部編

「文学部に行きたい」という中高生は、多数派、とまでは言えないかもしれないが、決して少ないものではない。

本を読むのが好き。国語が好き。歴史が好き。英語が好き。人間や社会について考えることが好き。こうした興味から文学部を志望する人は多いだろう。

ただ、「文学部」という名前から想像する学問と、実際に大学で学べる内容にはかなり幅がある。また、文学部には「就職が難しい」というイメージもある。

さらに北海道の中高生が文学・人文学系への進学を考える場合、もう一つ考えておきたい問題がある。
北海道では、文学・人文学系について、北大の次に選べる国公立大学の選択肢が多くない。

文学部とは、そもそも何を学ぶところなのか。
北海道の中高生が進学先を考えるとき、道内だけで探すべきなのか、それとも道外まで視野に入れた方がいいのか。

今回は、入試難易度や卒業後の進路も含めて考えてみたい。

文学部=文学を勉強する学部、ではない

文学部と聞くと、小説や古典を読む学部をイメージするかもしれない。

もちろん、日本文学や英文学などを専門に学ぶ学科はある。
しかし、文学部で扱われる分野はそれだけではない。

大学によって違いはあるが、歴史学、哲学、心理学、言語学、文化人類学、社会学、芸術学など、人間の言葉や文化、歴史、思想に関わる幅広い分野が含まれている。

当塾代表の出身校でもある「北海道大学文学部」は、その広がりが分かりやすい例だ。
人文科学科の中に「哲学・文化学」「歴史学・人類学」「言語・文学」「人間科学」の4コースがあり、18の研究室に分かれている。
日本史、東洋史、西洋史、考古学、文化人類学、哲学、芸術学、文学、言語学、心理学、社会学、地域科学などを専門的に学ぶことができる。

つまり、文学部という名前だけを見て、「文学作品を読むところ」と考えるのは正確ではない。

むしろ、人間がつくってきた言葉、文化、歴史、思想、社会などを研究する学部の一つと考えた方が実態に近い。

「国語が好き」だけでは、まだ大学は決められない

例えば、国語が好きだから文学部に行きたい。という生徒がいたとする。

これだけでは、まだ選択肢が広すぎる。

小説や詩に興味があるなら、日本文学や英文学が候補になる。
言葉そのものに興味があるなら、言語学という選択肢もある。
歴史が好きなら歴史学、思想について考えることが好きなら哲学、人間の心や行動に興味があるなら心理学というように、興味の方向によって学ぶ分野は変わってくる。

そして、同じ分野でも「文学部」という名前の学部でしか学べないわけではない。

心理学なら心理学部や教育学部、英語なら外国語学部や国際系の学部、社会や文化なら社会学部や国際系の学部なども候補になる。

北海道の大学を見ても、北星学園大学の文学部は英文学科と心理・応用コミュニケーション学科という構成になっている。文学部では「ことば」とコミュニケーションを軸に、基礎から専門演習、卒業研究へと学びを深めていく。2026年度からは登録日本語教員取得のためのプログラムも始まった。

このように、大学選びでは「文学部がある大学」を探すのではなく、「自分が興味を持っている分野を学べる大学」を探す方が合理的だろう。

では、なぜ「文学部は就職できない」と言われるのか

文学部についてよく聞くのが、文学部は就職に弱いという話だ。

これは、かなり根強いイメージだと思われるが、「文学部を卒業すると就職できない」という意味で受け取るのは正確ではない。

(当塾代表は北海道大学文学部出身で、しかも実質2年休学しているにもかかわらず、JT、住友金属、新日本石油の3社から内定を獲得している)

一つの理由は、大学で学ぶことと、卒業後の職業との結びつきが分かりにくいことではないだろうか。

医学部なら医師、薬学部なら薬剤師、教育系なら教員というように、大学で学ぶことと卒業後の職業が比較的分かりやすい分野がある。

一方、日本文学を研究したからといって、卒業後に「日本文学を仕事にする」必要は必ずしもなく、むしろ少数派と言ってもいいだろう。

文学部では、作品や史料を読み、先行研究を調べ、問いを立て、資料を分析し、根拠を示しながら自分の考えを文章にまとめる。こうした学びはどの職業にも通じるスキルとなるが、職業名としてわかりやすく表すことは難しい。

北海道大学文学部も、文学部での学びを通して「調べる」「分析する」「理解する」「人にわかりやすく伝える」といった力を身につけるとしている。実際、令和7年度の卒業生188人について、過去3年間の主な就職先には環境省、厚生労働省、国土交通省、財務省、総務省などの国家公務員をはじめ、幅広い民間企業や公務員の就職先が掲載されている。

また、「文学部は就職できない」というイメージには、文学部を志望する学生自身の進路意識も関係している可能性がある。

当塾代表の知人・友人の範囲で言えば、法学部や経済学部の学生と比べて、間違いなく文学部生は就職活動を始める時期が遅い(活動を始めても熱心ではない)傾向があり、なかには最初から就職活動をしないと決めているような学生も決して一人や二人ではなかった。

もう一つ、文学部の就職事情を考えるうえで見逃せないのが、大学院進学率の高さだ。

北海道大学の2025年度卒業生を見ると、文学部の大学院等への進学率は29.9%。法学部は22.3%、経済学部は14.4%で、文学部は他の主要な文系学部より明らかに高い。2024年度以前のデータは割愛するが、年度によるブレはあるものの傾向は同じである。

(ちなみに、経済学部は10%を割る年も多く、むしろ2025年度が高い。また、教育学部も28.6%となかなか高い。法学部の場合はロースクールの存在があるので、法曹資格と直結した大学院進学が相当数含まれるはずだ)

つまり文学部では、大学卒業時点で就職せず、大学院に進学するという進路が比較的多い。
「文学部は就職できない」というイメージを考えるとき、ここは意外に重要なポイントだろう。

(では、文学部を卒業して大学院へ進学することは何を意味するのか。ここは重要テーマなので、次回の記事で掘り下げることにする)

文学部の学生が他学部の学生より就職への関心が低いと示す統計的なデータがあるわけではないし、文学部の学生が全員そうだという話ではない。
しかし、そもそも就職活動をしなければ、就職できるわけがないのは当然の話である。

文学部を選ぶことそのものが、就職に不利になると考える必要はない。
ただし、職業に直結する資格や進路が決まっている学部ではないからこそ、大学に入ってから自分で卒業後の進路を考えることが、ほかの学部以上に重要になるとは言えるだろう。

北海道では「北大の次」が難しい

ここからは、北海道の中高生にとって特に重要な話になる。

文学・人文学系を学びたい場合、北大以外にも北海道内に選択肢はある。
北星学園大学、藤女子大学、札幌学院大学などである。

ただし、これらは私立大学である。
つまり他の分野と比べて、北海道大学の次に位置する国公立大学の選択肢が少ないのである。

例えば工学系なら、北海道大学だけでなく、室蘭工業大学、北見工業大学がある。
農学・畜産系なら北海道大学に加えて帯広畜産大学があり、商学・経済系なら小樽商科大学、教育系なら北海道教育大学がある。

もちろん、これらの大学はそれぞれ専門分野が異なるので、単純に「北大の次」と比較できるわけではない。それでも、北海道内で国公立大学を複数の選択肢から選べるという点では、人文学系とは事情が違う。

文学・人文学系の場合、北海道大学文学部は幅広い人文学を専門的に学べる一方、同じように文学・歴史・哲学・言語学などを幅広く学べる国公立大学はほぼない状況にある。

(北海道教育大学函館校は一つの候補になり得るだろうが、やはり「教育大学」という大学の性格上、北海道大学と同じような人文学の総合的基盤とは考えにくいかもしれない)

そのため、

北海道大学文学部を目指す

合格が難しい場合、道内の私立大学を検討する

あるいは、道外の国公立大学まで選択肢を広げる

という進路になりやすい。

ここが、北海道の文学・人文学系の大学選びで知っておきたいポイントだ。
「北大に届かなければ、文学・人文学系の国公立大学を道内で探せばいい」とはならないのである。

道外の国公立大学も選択肢に入れる

では、北海道大学文学部が難しい場合、どうすればいいのか。

一つの方法が、道外の大学まで選択肢を広げることである。

北海道の中高生にとって、道外の大学を受験することには、もちろん費用や生活面での負担がある。
自宅を離れて一人暮らしをするのであれば、授業料だけでなく、家賃、食費、交通費、帰省費用なども考えなければならない。
それでも文学・人文学系を志望するのであれば、道外まで目を向ける価値は大きい。

理由は単純で、大学の選択肢そのものが一気に増えるからだ
全国には、文学部、人文学部、人文社会学部などの名称で、文学、歴史、哲学、言語、文化などを専門的に学べる国公立大学が数多くある。
北海道内だけを見て、北海道大学文学部か、道内私立大学かという選択肢だけで考える必要はない。

道外まで含めれば、自分の学力と、学びたい分野の両方に合った大学を探しやすくなる

もちろん、道外国公立ならどこでもいいわけではない。大学によって専門分野も入試科目も異なる。
だからこそ、次のような順番で探していきたい。

何を学びたいか

その分野を専門に学べる大学はどこか

自分の学力でどこを目指せるか

入試科目や方式は合っているか

学費や生活費を考えて進学できるか

こう考えれば、「北大に届かないから、仕方なく別の大学」という選び方にならない。

入試難易度だけで道外大学を選ばない

ここで注意したいのは、道外進学を考えるときに、北大に届かないから、同じくらいの偏差値の大学を探すという方法だけに頼らないことだ。

大学選びでは、入試難易度はもちろん重要である。
しかし、人文学系の場合は特に、「何を専門にできるか」が重要な判断材料になる。

例えば、同じ「歴史学」でも、日本史に強い大学と西洋史に強い大学では学べる内容が違う。
同じ「文学」でも、日本文学を中心に研究する大学と、英文学や比較文学を中心に研究する大学では、当然ながら大学生活の中身も変わってくる。

だから、偏差値60だからこちら、55だからこちらという選び方だけでは不十分である。
「学びたい内容」と「自分の学力」の両方から大学を探すことが、人文学系の大学選びでは特に重要になる。

道内私立大学をどう考えるか

ここまで読むと、北大に届かなければ道外へ行くべきなのかと思うかもしれない。

もちろん、そういうことではない。北星学園大学、藤女子大学、札幌学院大学など、道内の私立大学にも、それぞれ異なる専門分野や教育内容がある。

例えば藤女子大学文学部には、日本語・日本文学、英語文化、文化総合の3学科があり、文化総合学科では歴史・思想、文化人類学、心理学、国際関係なども学べる。

つまり、「私立だから選ばないという考え方も、北大に届かないから私立にする」という考え方も、どちらも少し単純すぎる。
大切なのは、その大学で何を学べるのか、自分がどんな研究をしたいのか、そして入試難易度や費用が自分に合っているのかを確認することだ。
そのうえで、道内私立を選ぶのも、道外の国公立を選ぶのも、どちらも十分に合理的な進路になる。

道外進学には「費用」という大きな問題がある

一方で、道外進学には北海道ならではの負担もある。

自宅を離れて一人暮らしをする場合、授業料だけでなく、家賃、食費、光熱費、交通費、帰省費用などが必要になる。したがって、「道外の大学の方が選択肢が多いから、道外へ行くべきだ」という単純な話ではない。

学びたい内容、入試難易度、学費、生活費を全部合わせて考える。
例えば、道外の国公立大学に進学することで希望する分野を専門的に学べるのであれば、費用をかけてでも進学する価値があるかもしれない。
逆に、北海道内の大学で十分に興味のある分野を学べるのであれば、自宅から通える大学を選ぶことも合理的な選択になる。

中学生、高校生のうちにできること

では、まだ中学生の場合はどうすればいいのか。
この段階で「文学部に行く大学」を決める必要はない。

むしろ、

国語が好き
歴史が好き
本を読むのが好き
言葉に興味がある

という興味を大切にしておけばいい。

ただし、大学進学を考えるのであれば、国語だけを得意科目にしておけばいいわけではない。
特に国公立大学を目指すなら、共通テストで幅広い科目が必要になる。

「文学部だから国語だけ、英語だけ、文系教科だけ」という考え方は避けたい。

中学生の段階では、まず英語、国語、数学を含めて基礎学力をしっかりつけておく。
そのうえで、歴史や地理など、自分が興味を持てる分野を広げていくことが重要である。

そして高校生になったら、興味のある分野を少しずつ具体化する。
例えば、「歴史が好き」から、「西洋史に興味がある」まで進めば、大学選びも変わってくる。
さらに、「西洋中世史を研究したい」となれば、どの大学にどのような研究分野や教員がいるのかまで調べたくなる。
この段階になれば、北海道内だけでなく道外の大学も調べてみるとよいだろう。

進学教室FiveSchools

2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。

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