NANAIRO DAYS
2026.10.24
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成している。2027年度フロンティア入試の出願受付はすでに終了しているため、2028年度以降の受験生にも参考となるよう、制度の特徴や志願状況、一般選抜との違いを中心に解説する。募集人員・出願資格・選考方法は年度によって変更されるため、出願に際しては必ず最新の募集要項を確認してほしい。
北海道大学には、一般選抜とは別に「フロンティア入試」という入学者選抜制度がある。
いわゆる総合型選抜にあたる制度だが、「一般選抜より学力試験の負担が軽い」「一般選抜では難しい大学にも入りやすい」と考えるのは早計である。
北大のフロンティア入試では、大学入学共通テストが必要な方式もあれば、数学・理科の本格的な独自試験を課す方式もある。
それでは、一般選抜で北大への合格が難しい生徒でも、フロンティア入試なら合格できるのだろうか。
結論からいえば、フロンティア入試が一般選抜より簡単だとは限らない。しかし、選抜方法と自分の強みが合致するなら、十分に検討する価値がある。
2027年度の志願状況や実際の試験内容をもとに考えてみたい。
北大のフロンティア入試は、TypeⅠとTypeⅡに分かれている。
| TypeⅠ | TypeⅡ | |
|---|---|---|
| 2027年度募集人員 | 74人 | 63人 |
| 主な選考内容 | 書類・課題論文・面接等 | 書類・適性試験・面接等 |
| 共通テスト | 必要 | 不要 |
| 最終合格発表 | 2027年2月9日 | 2026年12月8日 |
いずれも書類による第1次選考があり、通過者に対して第2次選考が実施される。
TypeⅠでは、課題論文や面接等の結果に加え、共通テストの成績を利用して最終合格者を決定する。
TypeⅡでは共通テストを利用せず、数学・理科の適性試験や面接・口頭試問等によって選抜する。
具体的な試験内容や出願資格は学科・コースによって異なり、北大のすべての学部・学科で実施されているわけではない。
2027年度のフロンティア入試には、合計423人が志願した。
| 募集人員 | 志願者数 | 志願倍率 | |
|---|---|---|---|
| TypeⅠ | 74人 | 217人 | 2.9倍 |
| TypeⅡ | 63人 | 206人 | 3.3倍 |
| 合計 | 137人 | 423人 | 3.1倍 |
2026年度の志願者317人と比べると、106人、約33%の増加である。
もっとも、2027年度には獣医学部でTypeⅠが新設されるなど、募集構成にも変更がある。志願者増加のすべてを、既存学科の人気上昇と考えることはできない。
2027年度の主な募集単位の志願状況を見てみよう。
| 学科・コース | 募集 | 志願 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 獣医学部(Ⅰ) | 5人 | 65人 | 13.0倍 |
| 医学部医学科(Ⅰ) | 5人 | 24人 | 4.8倍 |
| 医学部検査技術科学専攻(Ⅰ) | 5人 | 4人 | 0.8倍 |
| 工学部応用マテリアル工学コース(Ⅰ) | 4人 | 4人 | 1.0倍 |
| 理学部物理学科(Ⅱ) | 11人 | 27人 | 2.5倍 |
| 工学部機械知能工学科(Ⅱ) | 5人 | 32人 | 6.4倍 |
同じフロンティア入試でも、志願倍率には大きな差がある。
特に新設された獣医学部には、募集5人に対して65人が志願した。
一方、応用マテリアル工学コースは募集4人に対して志願4人、検査技術科学専攻は募集5人に対して志願4人である。
この数字だけを見ると、後者は非常に有利に思えるかもしれない。
しかし、志願倍率が1倍以下だからといって、全員が合格できるわけではない。
志願倍率は、あくまで募集人員に対して何人が出願したかを示す数字であり、合格に必要な学力や選考基準を示すものではないからである。
工学部応用マテリアル工学コースを例に考えてみよう。
同コースでは、共通テストの数学200点、理科400点、外国語200点、合計800点を最終判定に利用する。
大学の公式説明では、520点程度に達している受験生を最終合格者の対象として判定するとされている。
520点は800点満点の65%にあたる。
では、共通テストで65%取れれば北大に合格できるのだろうか。
もちろん、そういうわけではない。
この520点程度という数字は、合格者の平均点でも、実際の最低点でもない。大学が示した最終判定の目安である。
さらに、共通テストによる最終判定を受ける前に、書類選考や課題論文・面接等を通過しなければならない。
共通テストの目安点だけを見て、合格の難易度を判断することはできないのである。
一般選抜について、予備校などが公表する「共通テストのボーダー得点率」を見たことがある人も多いだろう。
しかし、これはフロンティア入試で大学が示す判定目安とは意味が異なる。
一般選抜のボーダーは、予備校が過去のデータなどから合格可能性を予測した数値である。
一方、応用マテリアル工学コースの520点程度という数字は、第2次選考を通過した受験生に対する最終判定の目安である。
対象科目も、合否の判定方法も違う。
したがって、「一般選抜のボーダーが75%なのに、フロンティア入試なら65%でよい」といった比較は適切ではない。
とはいえ、評価対象となる科目の違いには注目する価値がある。
応用マテリアル工学コースのTypeⅠでは、共通テストの最終判定得点に国語や地歴公民などが含まれない。
数学・理科・外国語に強みがあり、ほかの教科との得点差が大きい生徒にとっては、一般選抜とは異なる評価を受けられる可能性がある。
共通テストの得点率が低くてよいことよりも、何の科目で評価されるのかが重要なのである。
2027年度から新たにフロンティア入試を実施する獣医学部では、共通テストの数学200点、理科200点、外国語200点、合計600点を利用する。
最終判定の目安は480点程度であり、得点率にすると80%にあたる。
応用マテリアル工学コースの65%とは異なるが、科目の配点構成も違うため、これだけで両学科の難易度を比較することはできない。
ここから分かるのは、同じTypeⅠでも、共通テストの判定基準は学科によって大きく異なるということである。
なお、獣医学部が公表している説明資料では、480点を合格判定の基準として、全学の募集要項より明確に表現している。出願を検討する場合は、募集要項だけでなく学部独自の説明資料にも目を通しておきたい。
2027年度の獣医学部は、フロンティア入試TypeⅠの募集人員が5人、一般選抜後期日程の募集人員が10人となっている。
また、フロンティア入試の合格者が募集人員に満たない場合には、その欠員を一般選抜後期に加える仕組みとなっている。
つまり、フロンティア入試と一般選抜は、完全に独立した募集枠として考えられるわけではない。
獣医学部への進学を考える場合には、フロンティア入試の倍率だけでなく、一般選抜の募集人員や選考方法もあわせて確認する必要がある。
TypeⅡは共通テストを課さず、数学・理科の適性試験などで合否を判定する。
国語や地歴公民が苦手でも、数学・理科で高い学力を発揮できる生徒にとっては、検討する価値がある。
ただし、独自試験が簡単というわけではない。
例えば理学部物理学科では、数学・物理・化学の適性試験に加え、面接・口頭試問が行われる。
2027年度の配点は、適性試験450点、面接300点の合計750点である。
面接の配点が全体の40%を占めるが、単に受け答えの印象がよければよいわけではない。物理学などに関する口頭試問を通じて、理解力や説明力も評価される。
また、工学部応用物理工学コースの説明資料では、物理の選択問題について、北大の一般選抜と同程度の難易度であると説明されている。
共通テストが不要だからといって、数学・理科の学力まで軽く見られるわけではない。
TypeⅡの試験内容は、学科によって異なる。
例えば理学部化学科では、数学の基本問題に加え、物理・化学の記述式問題が課される。
さらに、化学科は公式サイトで、従来のAO入試と異なり、特別な経験・実績は必要ないと明記している。
つまり、総合型選抜だからといって、必ずしも高校時代の特別な活動実績が必要なわけではない。
もっとも、これは化学科の説明であり、すべての学科に当てはまるわけではない。TypeⅠでは、学校内外での活動や資格などを評価資料として提出する学科もある。
同じTypeⅡでも、試験科目や配点、面接で問われる内容が異なるため、志望学科の過去問題や選考方法を個別に確認することが重要である。
フロンティア入試では、学力や志望動機以前に、出願資格を確認する必要がある。
例えば2027年度の理学部地球惑星科学科TypeⅠでは、指定された理科科目の履修に加え、英検2級以上またはTOEIC L&R 600点以上という英語資格の要件がある。
また、合格した場合には入学を確約できることも求められる。
こうした条件は学科によって異なる。
学力が十分でも、必要な資格や履修条件を満たしていなければ出願できない。
「自分の学力なら合格できそうだ」と考える前に、まず出願資格を確認しておきたい。
北海道大学・2027年度フロンティア入試学生募集要項(PDF)
フロンティア入試のメリットは、試験科目だけではない。
北大の一般選抜には、入学後に学部・学科等への移行先を決める「総合入試理系」がある。
総合入試理系では、入学後の成績や希望などに基づいて移行先が決まるため、希望する学科・コースへ必ず進めるとは限らない。
これに対し、フロンティア入試では、出願時点で特定の学科・コースを志望する。
例えば応用マテリアル工学コースでは、1年次に総合教育部で学んだ後、2年次から同コースに配属されることが公式に説明されている。
入学前から学びたい専門分野が明確な生徒にとって、これは大きなメリットである。
一方、大学に入ってから専門分野を選びたい生徒には、総合入試理系の方が適している場合もある。
なお、一般選抜にも学部・学科別の募集があるため、「一般選抜では希望する学科に直接進めない」というわけではない。
どの選抜方式が自分に合っているかは、合格の難易度だけでなく、入学後に何を学びたいかによっても変わる。
フロンティア入試を検討する際には、一般選抜との両立に加えて、選考がどのような日程で進むのかを知っておく必要がある。
2027年度の選考日程は次のとおりである。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月9〜15日 | 出願期間 |
| 10月27日 | 第1次選考結果発表(予定) |
| 11月15日 | 第2次選考 |
| 12月8日 | TypeⅡ最終合格発表・TypeⅠ第2次選考結果発表 |
| 2027年1月 | 大学入学共通テスト |
| 2月9日 | TypeⅠ最終合格発表 |
この日程から分かるように、フロンティア入試の準備は、一般選抜の受験勉強と並行して進める必要がある。
2027年度の出願期間は9月上旬であり、それまでに志望学科で指定された書類を完成させる必要がある。
特に、活動実績を記載する書類や、学校の先生に作成を依頼する書類がある場合は、出願直前に準備を始めるのでは間に合わない可能性がある。
そのため、夏までには必要書類を確認し、準備を進めておきたい。
なお、課題論文は第2次選考で課される場合があり、出願時に提出する書類と混同してはいけない。
TypeⅡでは、11月に数学・理科の適性試験や面接等が実施される。
例えば理学部化学科の数学・物理・化学の記述式問題は、一般選抜の勉強とも重なる部分がある。
一方、理学部物理学科のように口頭試問の比重が大きい学科では、問題を解けるだけでなく、考え方を言葉で説明する練習も必要になる。
どの程度の追加対策が必要かは、志望学科の試験内容によって異なる。
まずは過去問題やモデル問題を確認し、普段の受験勉強だけで対応できる部分と、別途準備が必要な部分を整理するとよいだろう。
TypeⅡは12月に最終合格が発表される。
不合格だった場合、翌年1月の共通テストまでは約1か月しかない。
一般選抜も受験する予定なら、フロンティア入試の準備期間中も共通テスト対策を継続する必要がある。
TypeⅠでは、12月に第2次選考を通過しても最終合格が確定するわけではなく、共通テストの結果を待つことになる。
いずれの方式でも、フロンティア入試だけに照準を合わせ、一般選抜の準備を後回しにすることにはリスクがある。
フロンティア入試のために必要な追加対策が、一般選抜の勉強をどれだけ圧迫するのか。
これを事前に見積もったうえで、挑戦するかどうかを判断したい。
フロンティア入試は、一般選抜より簡単な入試とは限らない。
募集人員に対して志願者が少なくても、全員が合格できるとは限らない。共通テストの目安点が低く見える学科でも、その前段階に選考がある。共通テストを利用しないTypeⅡでも、本格的な数学・理科の学力が求められる。
それでも、フロンティア入試には利用価値がある。
一般選抜とは、評価対象となる科目や試験の形式、合否の決め方が異なるからである。
例えば、数学・理科に突出した強みを持つ生徒、科学的な課題について考え説明することが得意な生徒、希望する専門分野が明確な生徒にとっては、自分の強みを生かせる可能性がある。
その一方で、出願書類や面接などの準備に時間がかかり、一般選抜の勉強に支障が出るようなら、必ずしも得策とはいえない。
「北大のフロンティア入試は狙い目か」という問いに、一律の答えはない。
重要なのは、倍率や共通テストの目安点だけで判断するのではなく、実際の試験問題を確認し、自分の強みがどこで評価されるのかを見極めることである。
そのうえで、一般選抜への準備を大きく犠牲にせず挑戦できるなら、フロンティア入試は十分に検討する価値のある選択肢だと考える。
なお、2028年度のフロンティア入試については、理学部地球惑星科学科、医学部保健学科、TypeⅡの数学の適性試験に関する変更が予告されている。
これから受験する生徒は、北大公式サイトのフロンティア入試情報で最新情報を確認してほしい。
進学教室FiveSchools
2018年に札幌に設立され、小学5年から高校3年まで5教科指導を行う総合進学塾。教科別「クラス授業」、通い放題「FIVE学習会」、1on1「個別指導」を指導の3本柱に常に高い実績を生み出し続ける。北海道の塾ながら、Webを通じて本州、九州、四国、時に海外まで広く塾生を抱えることも特徴。
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