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2024.09.20
出典:平野多恵 他「国語をめぐる冒険」
日本の国文学者、成蹊大学教授。専門は中世文学。おみくじや占いについての研究も手がける。著書に『明恵 和歌と仏教の相克』『おみくじのヒミツ』『おみくじの歌』『歌占カード 猫づくし』、共編著に『大学生のための文学レッスン 古典編』『秋篠月清集/明恵上人歌集』『明恵上人夢記訳注』『国語をめぐる冒険』等。
問1
4「詩歌」が出たので、「これは『しいか』だけが◎で、『しか』は✕とか言い出すのでは……」と嫌な予感がしたものの、模範解答見たらどっちもOKになってました。よかったです。
毎年言っていますが、3「鈍く」のような送り仮名のある問題で、送り仮名の部分まで解答欄に書くと✕にされる採点が散見されますので、一応注意を。
問2
1行目「どうして、~」の部分を答えに含めるかどうかがちょっと判断に迷う。
1行目の後ろで一旦話が途切れているので、傍線部の「こんな疑問」の指示範囲には入らないと考えるのが通常でしょう。
問4
直前「つまり」もヒントになるし、内容的にも前の段落をそのまま書けばOKなのはすぐに判断できるはず。点数の取りやすいタイプの記述問題なので、まず記述が苦手な人は、この問4がしっかり満点近く取れるような思考法を身につけたい。
「テーマが和歌であること」……和歌が出てくるところじゃないと答えになるはずがない。
「傍線部の内容が『幾重にも織り込まれた象徴的な意味の世界」であること」……同じ内容になっているのは、直前の段落であること。
「問題文に『千年』『多様』という指定語句あること」……ここからも、直前の段落が答えになることは明らか。
「傍線部直後が、『和歌占い』に話題が変わっていること」……傍線部より後ろが答えになる可能性はほぼない
記述が取れる人は、このような思考で「どのあたりに答えが書かれているか」を発見しようと試みているわけです。
問5
40字程度、という指示が微妙ですが、「そうした豊」の部分をスタートとしてもわたしはOKだと思います。
(普通指示語の答えに指示語は含めないのはわかりますが、実際含まれてしまっているのだから仕方ないでしょう。ここを問題にするほうが悪い)
模範解答には書かれていなかったので✕にされているのかどうか??
出典:鹿毛雅治「モチベーションの心理学」
1964年、横浜市生まれ。横浜国立大学教育学部卒業。慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻修士課程修了、同博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学教職課程センター助手、同専任講師、同助教授を経て現職。専門は教育心理学、教育方法論、教師教育。近刊に『モチベーションの心理学―「やる気」と「意欲」のメカニズム』(中公新書)。
パっと見「評論が2題出題している」ように見えますが、学テAは毎回「随筆+評論」という構成なので、大問1は評論ではなく随筆と言う扱いなのだと思います。大学入試ではよくある形式ですが、北海道だと学テAぐらいでしょうか。
大問1は研究者が書いた文章ではあるものの、どちらかと言うと自分の人生を振り返って語っている文章なので、やはり論説ではなく随筆という趣でしょう。
それにしても、なぜ外山滋比古が大問1と2どっちにも出てくるのでしょうか。
しかもどっちもかなり肯定的に書かれているので、学テAが問題全体として外山滋比古をヨイショしているように見えてちょっと座りが悪い。
(外山滋比古さんはとても素晴らしい著述家だと思っています)
内容的には、ずっと同じことしか言っていないうえに具体例も豊かで読みやすく、簡単と言っていいレベルだと思います。
問題も素直なのはいいのですが、記述がゼロなのはどうなんでしょうか。
どんどん書くこと、記述問題の比重が高まっている中で、ここまで公立入試の傾向に合わない旧態依然な問題を出すのはいかがなものかと思います。
出典:「十訓抄」
『十訓抄』は鎌倉時代中期の教訓説話集。 仏典「十善業道経」に発想し、「十訓」こと十ヶ条の教誡を掲げ、古今和漢の教訓的な説話約280話を通俗に説く。儒教的な思想が根底を流れる。
全訳
尼上は紙衾というものだけを着て座りなさっていたところに、安養の尼上の姉に仕えている小尼君という者がいたのが、走って参上して(尼上の様子を)見たところ、(強盗が)小袖をひとつ落としていったのを見て、「これを落としていっています。身に付けてください」といって、持ってきたところ、(尼上は)「(強盗が)それを取ったあとは、きっと自分の物だと思っているだろう。持ち主の納得がいかない物をどうして着ることができるだろうか、いやできない。まだ、まさか遠くへは行っていないだろう。早く早く持っていらっしゃってお与えなさい」と言ったので、(小尼君は)門の戸の方へ走り出て、「これ。」と(強盗を)呼び戻して、「これを落としなさった。間違いなく差し上げよう。」と言ったので、強盗たちは立ち止まって、少しの間考えこんでいる様子で、「具合が悪いところに参上してしまった。」といって、取った物を、すべて返して置いて、帰ってしまった。
いつも「古文はあらすじ把握が命」と言っていますが、まさしくあらすじ、ストーリーが分かれば簡単に満点取れますし、話がつかめていなければまったく意味がわからないはず。
「絵本を子どもに言い聞かせるように、古文のあらすじを説明する練習」
をやってみてほしいです。細かい訳にこだわるよりも、「要するにどういう話なのか」にこだわる姿勢を持ちましょう。
ただ、この話は「尼上」の行動の動機がわからなくて困ったかもしれませんね。
「十訓抄」は出典の説明のとおり「教訓」を説くものなので、まさに「昔話の絵本」の価値観なのです。
「尼上のような無欲な人間が、最終的に得をする話」、要するに「舌切りすずめ」の変形バージョンのように考えれば納得がいくのではないでしょうか。
……そもそも今の子どもって「日本昔ばなし」的なものに触れて育つのでしょうか??
古文って、こういうパターン化された物語がとても多いので、幼少期にこういう典型的な物語を読んできた生徒のほうが強いような気がしています。
題材が面白くてとてもいいですね。
正直「地域のボランティア活動の計画づくり」みたいなのばっかりでワンパターンすぎるので、こういう資料問題も、題材としての面白さを追求してもらいたいと思ってます。
授業で扱っても、内容的な面白さが全然ない問題が多数派なので……。
問1は答えがわかりやすすぎるほど明らかですし、問3も「空欄の後ろを見て考える」ことさえできていればOKです。
問4の「Dさん」が少し悩むかも?
問5は「本文の表現ではなく、自分で考え出す」問題で、こういう問題があると「ただ本文から抜き出すことだけが記述ではない」ことが理解できて、生徒の学習効果としても良いことだと思います。
英語に続いて国語も、特段おかしなところもなくなかなかの良問だったのではないでしょうか。
ただ、難易度的には、道コンで言えば☆1だと思います。今年の中2夏の道コンのほうが難しい。
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