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テストレビュー

2025年8月 中2道コン国語レビュー

大問1(漢字)

去年は平均点48.4、中1と同じく、全教科の中でもっとも国語の平均点が低いという鬼畜仕様の年度でしたが、今年はどうでしょうか。

漢字については、わりとやさしめで得点しやすいレベルだと思います。

大問2(資料)

資料の数、文章量が見るからに少なく、問題も素直なものばかりで、去年からだいぶ難易度を下げにきた感じがうかがえます。

問1
この問題を「言いたいことは一番最後!」という消化のしかたをしてほしくないです。
別に「サンドイッチ」の話を最初に持っていって、あとからその補足説明をしても全然問題ないわけで、「言いたいことは一番最後!」のような、賞味期限切れの受験指導をいまだに繰り返す指導者の言うことを信じてはいけません。今回はたまたま、偶然言いたいことが最後にあった、というだけのことです。

問2
採点基準A、「おいしいものを食べること」がないと✕と書かれていますが、この基準はいかがなものでしょうか。
直前に「旅先のおいしいものを求めて」と類似した内容が書かれているわけで、あえて類似内容をもう一度書かなくてもOK、として省略することはありえるかな、と。
また、「そういったことを目的にした」「そのために訪れた」のように指示語を使って解答した場合はどう評価すればいいのか。
もう少し「採点判断に困りそうなケース」を想定して、そこに適切な根拠と方針を与える採点基準を作ってもらいたい。

大問3(小説)

出典:まはら三桃「つる子さんからの奨学金」
1966年、福岡生まれ。2005年、「オールドモーブな夜だから」で第46回講談社児童文学新人賞佳作を受賞。受賞作は『カラフルな闇』と改題し刊行。2011年『鉄のしぶきがはねる』で第27回坪田譲治文学賞を受賞。

初めて、もっと勉強したいって思った。
女子ゆえに進学に苦労した曾祖母つる子は、ひ孫のわかばと樹に奨学金をだすという。
ただし、そのためにはひとつ条件があって……。
高校受験とバレー部の両立、応援し心配する親からのプレッシャーに悩みながらも、わかばは挑戦するおもしろさを感じていく。

問1~3については、状況と傍線部の内容を理解すれば答えの内容がそもそも容易に推測できます。
中1レビューでも言いましたが、「この状況と、傍線部と、質問内容だと、きっとこんな答えになるのだろうな」という類推能力を持てることが国語の点数アップには非常に重要な要素です。
これは「高校入試にだけ通用する皮相なテクニック」ではなく、大学受験でもどこでも通用する根本的な思考法です。

問4
模範解答の日本語が本文のコピペすぎて冗長ですし、採点基準もこれも行き届いていないものだと思います。
この設問なら、「こだわりすぎないようにしてきたが、今は部活も勉強にも向上心を持って頑張りたい」という答案でも十分マルにすべき内容だと思います。この答案をどう評価すべきか採点できる基準になっていない。
「生徒が本文内容を要約して、自分の言葉で言い換えてきた場合」を想定して採点基準を作らないから、どうでもいい細かい基準ばかり増える一方で、こういう要約性の高い答案に対応できなくなる。

そもそも、模範解答の内容の薄さに比べて文字数が多すぎるのです。
この内容の記述で80字も書く必要ないです。せいぜい60字程度で出題すべきものだと思います。

問題とは関係ないですが、問4のこの状況で「友達を傷つけてしまった、ひどいことを言ってしまった」よりもほとんど自分のことしか考えていない主人公、ちょっとキャラ造形としてどうなのだろう……
この性格の主人公に共感できる人がどれぐらいいるのか、と思ってしまいます。
クズを描きたいならもちろんそれはそれで価値が高いのですが、これはどう考えても「前向きに頑張る少女」を描こうとしている感じなので……。

大問4(評論)

出典:川添愛「世にもあいまいなことばの秘密」
1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。

問2
こういう、問題文の内容と文法をからめてくるような出題はとても好きです。
ただ、なぜ選択肢に「形容動詞」を入れたほうがよかったかな、という気はします。名詞は外していいでしょう。

問3
「~という言葉を使わずに」という条件、最近やたら見るようになりましたが、流行っているのでしょうか。
ただのコピペを防ぐ、という意味でわりと効果がある条件だと思うので、わたしは好きですけど。
採点基準、C「足りない」がおかしい時点で日本語として成立しないので、Cがダメならその時点で✕でいいのでは??
この基準だと、まったく逆の内容を書いても4点ついてしまうのでは。

なんか、採点基準の雑さが目につきますね、今回。

問4
おばあちゃんがかわいそうです。
問題としてはごく標準的だと思いますが、この問題で「反発を受けにくい」のところを書くべきだと思い至った人は決して多くないのでは。ヨネスケのちょっとしたエピソードを「筆者が主張した利点」だと言っていいのかは微妙なラインだと思います。

(どうでもいいですが、ヨネスケはわたしは落語家・桂米助としての姿しか見たことがないので、「グルメリポーター」を言われているのを見ると、やはり世間の目はそうなのだな、としみじみ思います)

あと、採点基準A「具体性を欠いている」と、C「細かい違いを無視している」は結局同じ意味なので、これを2つの基準に分ける意味はまったくない。

文章じたいは、ごく身近で当たり前だと思っていることを掘り下げて新しい発見をもたらしてくれるものなので、とても良いものだと思います。
この出典の表紙を見たとき(Amazonででも確認してください)は「大丈夫かこの本」と嫌な予感でいっぱいでしたが、見た目で判断してはいけませんね。中1道コンのどうしようもない文章が岩波新書で、この出典の表紙がコレなのですから、ブランドで本を選ぶとひどい目にあいます。

大問5(漢文)

出典:「十八史略」
南宋の曾先之によってまとめられた、初学者向けの歴史書、歴史読本である。三皇五帝の伝説時代から南宋までの十八の正史を要約し、編年体で綴っている。「十八史」とは、『史記』から『新五代史』までの17史に曾先之が生きた宋一代を加えたものを意味している。

いやぁ、FiveSchools「中学国語Suクラス」の漢文テキストとモロかぶりしてしまいました。
道コンで的中しても何もうれしくない。
中2生で中学国語Suを漢文まで修了している生徒はごく少数ですし、そんなことができる生徒は的中していようがしていまいが点数取れるので、さほど影響はないと思います。

内容的には注釈だらけですし、これと言ってコメントすることのない標準的なものな気もしますが、この物語は結局のところ「上司と部下の目に見えない信頼関係」を描いたものなので、中学生には意味が理解しにくいかも……。「項羽と劉邦」とか読んでると、劉邦と部下の関係に近いものがあって感覚がつかみやすいと思います。

全体的に見れば、間違いなく思いっきり難易度が下がっています。
年度でここまでブレさせず、もうちょっとちょうどいい難易度のラインを見定めてほしいなぁ、と。
採点基準にだいぶ文句言いましたが、明日レビューをアップする中2英語の採点基準は国語以上にアレなクオリティだったので、今日以上の熱量で文句を言いまくることになります。先に予告しておきます。

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