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2023.08.14
問1~2
「委嘱」は厳しいですねぇ、これは大人でも読めない人多いでしょう。
「派閥」はどうでしょう? 「藩閥政治」が社会で出てくるから、読める人多いように思います。
書きのほうは標準的レベルですね。
問3
これも難しい。かなり多くの生徒がイを選ぶと予想。
意味的にはイでよさそうですし。
「更」に「あらためる」という読みがあるんですよね。
だから「生をあらためる=生まれ変わる」という意味になるわけです。
問5は特に問題ない標準的な問題だと思います。
中1の大問1、このぐらいのレベルでいいと思うんですよ最初は。
出典:榎本博明「『すみません』の国」
東京都生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学 (1949-2011)大学院心理学専攻博士課程中退。1994年、「自己開示に関する心理学的研究」で、東京都立大学より博士(心理学)の学位を取得。川村短期大学講師、大阪大学人間科学部助教授等を経て、2003年に名城大学人間学部教授、2011年に退職し、MP人間科学研究所代表となる。
今年の入試に合わせて、小説なしの評論のみという構成で今回は出題してきました。
道コンはこのスタイルが来年以降も定着すると読んでいるのか、あるいは10月道コン以降いろいろな形式を出してくるのか。
内容的には「本音と建前」というよくある日本vs欧米の対比軸をもとに書かれていますが、傍線部2「欧米人は自分の本音に自分で気づきにくい」という指摘はあまり過去に見たことがなく、わたしにとっては新鮮な内容でした。
……中学生、どうですかね。
具体的にこれをイメージしながら理解していける生徒はどの程度の割合なのでしょうか。
文章前半はわりとわかりやすいと思いますが、傍線2あたりから内容の抽象度が増していき、言葉づかいも難しくなっていき、なかなか厳しい戦いとなったのではないかと。
ただ、上段の中盤部分、30行目あたりまで理解できてしまえばあとはほぼその繰り返しに近いので、そこまでクリアできてしまえば高得点も可能だとは思いますが。
「高1生の模試で出たとして標準レベル」ぐらいの文章でしょうから、公立高校入試レベルとしては結構ハイレベルな文章だとは思います。ただ、まぁ中3ですしこのぐらいは全然アリな範囲だと思います。
低学年でやったらやりすぎですけど。
問2
(1)採点基準に異議ありです。
基準①「相手の立場にお構いなし」と基準③「一方的に」というのは、言い換えているだけで結局同じことなので、これを別個に2つ書かないと減点されるのは理にかなっていないし、この2箇所で配点が4点、基準②に1点しか配点されていないのもバランスを欠きます。
基準①と③はどちらか書かれていればOKで3点、基準②「大義名分」が書かれていれば2点と配点するのが適切ではないかと。
(2)傍線の近くから抜き出せばいいというものではないことを生徒に印象づける、教育的な価値をもつ良問だと思います。
ただ、変な国語講師にあたってしまうと、「結論は最終段落に書いてある!」みたいな変な教え方に使われてしまいそう。
問3
(1)こういう問題で答えがうまく見つけられない人は「傍線部に対するこだわり」が弱いのだと思います。
傍線部に「きまりの悪い思いをしている」と書かれてあるのだから、徹底して「きまりの悪い思い」にこだわる。「日本人が、きまりの悪い思いをしていることが書かれている場所を発見するんだ」という目標を最初から持って探すからこそ答えがスムーズに見つかるのです。
(2)今回の道コン「すべて選べ」が頻発しているのは、今年の公立高校入試で出題されたからですね。適当に選んで当たる割合が一気に下がるので好ましいとは思うのですが、「まったく的外れだった生徒」と「2つ当てて1つだけ外した生徒」がともに0点になるのはどうにかならないものか、とは思います。
大学受験もそうですけど、「マルかバツか」じゃなくてもっと中間点を認められる採点基準が広まればいいのに。
まぁこれは道コンに文句を言う筋の話ではないので、一般論としてですけど。
それはそれとして、すごくいい問題です。
問6も、シンプルかつ穏当な要約問題でとてもいいですね。
こういう問題をしっかり自力で解ける生徒を育てていかねばいかん。
出典:鴨長明『発心集』
平安時代末期から鎌倉時代にかけての日本の歌人・随筆家。建暦2年(1212年)に成立した『方丈記』は和漢混淆文による文芸の祖、日本の三大随筆の一つとして名高い。他に同時期に書かれた歌論書の『無名抄』、説話の『発心集』(1216年以前)、歌集として『鴨長明集』(養和元年 1181年)といった作品がある。
リード文が丁寧で、注も多いので、分量はそこそこあるもののある程度古文慣れしている生徒であればそこまで難しくはないと思います。
評論が難しい分、ここで確実に高得点を取っておきたい。
解釈のポイント
1行目
「心うき」は「心憂き」と書く。「浮き」ではないので要注意で、よく出る表現なので覚えておくほうがベター。
2行目
「二つ三つにや過ぐべき」は、係り結び「や」があるので「疑問・反語」であることを見抜きたい。
すると「二つ三つ以上になることがあるだろうか、いや、なるはずがない」と反語で訳すとぴったりだと気づける
3行目
「叶わせぬ」の「ぬ」は否定。「ぬ」は完了(~してしまった)と否定(~ない)どちらにもなる可能性があると認識しておきたい。
また、「口惜し=くやしい、残念」はよく出るので覚えておきたい。
また、「~ど」が「逆接=~だが」であることも読み取れるようになっておきましょう。
4行目
「虫とならんと」の「ん」は否定ではなく、「~しよう」と訳す。
「ん」が否定になることは古文では原則的にないです。
また、「いきどほり=憤り=怒り」は古文単語とは言えないものの、知らない中学生結構いそう。現代語として覚えておきましょう。
「~ずは」=「もし~でなければ」は、知識として覚えておくには難易度高いですが、文脈からわかったでしょうか。
「~を得じ」=「~できないだろう」。「得」にcanの意味があるのは現代語でも使う用法なので理解できてほしい。「~じ」は「~ない(だろう)」と訳す否定表現なので知らない人は必ず覚えておく。
6行目
ストーリーが理解できていればこの時点で「白き虫=死んだ尼」だろうと推測可能。
「いづれ=どれ」は現代語でも使うので大丈夫でしょうか?
問1
字数制限がないと「橘の実」だけで答えてしまいそうですが、「5字以上」という制限がヒントになるので満点取りやすくなっていると思います。
「橘の木」と書かないように。木は食えない。
あと、なぜ「二つ三つ」を入れないと減点になるか、納得していますか?
傍線部を含む箇所を訳すと
「たったその程度のものを惜しんで、私の願いをかなえないなんて、なんて悔しい」
となりますね。
だから「たったその程度のもの」というニュアンスを説明しないといけないわけです。
たとえば「大きな橘の実」と書いてしまうと、「大きい=貴重なもの」という意味が出てしまうから「たったその程度のもの」という意味とつながらなくなってしまうのですね。
問4
本文ラストの行は注釈を見ても若干意味がわかりにくいですが、問題文でかなり丁寧に(誘導的に)整理されているので、問題文の指示をたどっていけば答えは出せたかと思います。
問4がちょっとクセありますが、なんとか満点狙える問題だと思います。
スライドの数は多いものの、ひとつひとつの情報量は多くないのでさほど読むのに苦労はしないかと思います。
問5の記述は、そもそも書く時間が残っていたかどうか……。
評論で力尽きて、ここまでたどり着けなかった生徒のほうが多いかも。
内容は正直大したことないんですよ。
大問2に比べるとよほどこっちのほうが高得点取りやすい。
もし、大問2よりも先に大問4に取り組んでいた生徒がいたとしたら、今回に関してはそれが正解だったかもしれません。
大問2で時間食いまくってしかも得点できず、大問4を白紙で出した生徒が今回はもっともワリを食ったと言えるでしょう。
数学もそうですけど、国語もこれだけ長文化、記述ボリュームの増加がはかられると、タイム・マネジメントの重要性がますます増していくことになりそうです。
中1~中3どれも例年よりも厳しめのレベル設定で、国語で凹まされた人が数多く出ただろうと思います。
中3、これで80点取れたらかなり自信を持っていいのでは。
70点超えただけでも決して悪くないレベルだと思います。
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