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2025.11.14
出典:久保田万太郎
1889-1963、日本の小説家、劇作家、俳人。
浅草生まれ。耽美派(三田派)の新進作家として登場。劇作でも慶大在学中から注目され、築地座を経て文学座創立に参加。新派、新劇、歌舞伎の脚色・演出と多方面に活動を展開。日本演劇協会会長を務め、文壇・劇壇に重きをなした。小説戯曲共に多くは浅草が舞台で、江戸情緒を盛り込んだ情話で長く活躍。文人俳句の代表作家としても知られ、俳誌「春燈」を創刊・主宰した。
出典:山下一海「俳句への招待 十七音の世界にあそぶ」
1932-2010、日本の俳文学者。鶴見大学名誉教授。
福岡県福岡市生まれ。幼時から両親の影響で俳句に親しみ、小学校上級から中学にかけて句作に熱中した。やがて句作からは離れたが、早稲田大学文学部国文学科卒、大学院で近世文学を専攻。
(いずれもWikipediaより引用)
なかなか味わいと格調がある文章で、読解も難易度が高めだと思いますが、さらに質問の意味が受け取りにくいものが多く、苦戦した生徒がかなり多いのではないでしょうか。
問1
まず「いろはにほへと」と「色は匂へど」との関係を今の中学生は知っているのかどうか。これを知らないと設問の意味がかなりわかりにくいものになります。
また、「本来の〈いろはにほへと〉の意味」を「物事の初歩」のような意味でとらえた人も多いのかな、と。
(だとすると、5字で抜き出せる場所がないので答えを探せないのですが)
問3
「不思議な効果」が何かを聞いているのではなく、「どういう特徴から生まれてくるか」を求めていることに注意。
問4
これも「桜が散る」=春が終わっている=夏、と考えてしまう人が多いでしょう。
気持ちはすごくわかるし着眼点はとても良いのですが、桜は一瞬で散ってしまうので、散ったからと言ってまだ夏にはなっていませんよね。
(北海道だとGW明けに桜が散ると考えると、5月=すでに夏になっている、と解釈できそうなのがまた……京都の季節感がベースなので、北海道基準で考えてはいけない)
出典:上野歩「お菓子の船」
1962年、東京都生まれ。専修大学文学部国文学科卒業。1994年に『恋人といっしょになるでしょう』で第7回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。著書に『キリの理容室』『料理道具屋にようこそ』『わたし、型屋の社長になります』『就職先はネジ屋です』『鋳物屋なんでもつくれます』『天職にします!』『あなたの職場に斬り込みます!』などがある。(講談社公式サイト)
語り手が誰の立場から語っているのかがよくわからず、スタートの時点から文章に少し違和感を覚えてしまいます。
(ワコ本人の視点のような主観的な書き方をしているが、「ワコ」と3人称的に主人公を呼んでいる)
問3
空欄3は「がっしり」「きっちり」でも否定はできないような……
問5
「焼き菓子」と答えてしまう人が多そう。あくまで「回想の中から」答える問題ですし、というか「焼き菓子」だったら何でもいいのか、という話になってしまいます。
(この話全体がワコの回想にも読めるので、問題文指示が曖昧ではあると思います。「幼少期の回想」のように限定がほしいところ)
問6
記述の答案というのは、基本的に「その本文を読んでいない人が模範解答を読んだだけでも意味が理解できる」ものにすべきだとわたしは考えています。
模範解答の答案だと「お菓子の風景」という語の意味がまったく判然としないので、本来であれば「お菓子の風景」が何なのかを説明するところまで踏み込んで書きたいところ。
(まぁ問8で「お菓子の風景」を説明するので、問6と問8の合わせ技と考えればいいのでしょうが)
問8
かなり解答に幅が出る問題なので、何が許容されて何が許容されないのかを反省会で知りたいところ。
出典:兼好法師「徒然草」
鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての官人・遁世者・歌人・随筆家。日本三大随筆の一つとされる『徒然草』の作者。『徒然草』は清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』とならび日本三大随筆の一つと評価されている。
私家集に『兼好法師家集』。 治部少輔・卜部兼顕の子。卜部兼名の孫。鎌倉および京都に足跡を残す。
旧来、吉田神社の神官の家系である吉田流卜部氏の系譜に連なると考えられてきたが、資料の見直しにより、その根拠となる家系図が吉田兼倶による捏造ではないかという見解がある。
現代語訳
京都の嵐山にあった後嵯峨天皇の退位後の邸宅のお池に、大井川の水をお引き入れなさろうとして、大井の土地の住民におっしゃって、水車を造らせなさった。 (上皇は)多くのお金をお与えになって、(村人は)数日で造り、(水車を)掛けたのに、まったく回らなかったので、あれこれと修理したけれど、結局回らないで、無駄に立っているだけであった。 そこで、宇治の里の人をお呼びになって、造らせたので、(宇治の里の人は)簡単に組み立てて差し上げたところ、思いどおりに回って、水を汲み入れることはすばらしいものであった。 万事につけて、その道を理解している者は、すばらしい者である。
大問1,2と比べると難易度は低めかと思います。
この短さの文章を3つの段落に分けさせる意味がどこにあるのか、というのは少々疑問ですが……。
出典:三宅香帆「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」
文芸評論家。1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。著作に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。
最近のヒット作ではありますが、私見を飛躍たっぷりに煽る軽薄な文章に感じてしまい、どうにも読み進めるのに抵抗感があります。
ラストなんて「評論」というよりも選挙のアジテーションみたいな文体ですし、全体的にもSNSの投稿を長文にしてつなげたような文章に見えてしまって、大問1の文章と比べるとかなり格調に差を感じます。(「ぶっちゃけそう思うときもある」という文章を国語のテストで出すべきなのだろうか、と……)
本書の中にはもっと扇動的でなく冷静な筆致で書かれている箇所もあると思うので、せめてもうちょっと「論説」らしい箇所を出題してほしかったな、と個人的には思います。
問4
最近の流行りなのでしょうか、指示語の答えが後ろにあるパターン。
このタイプの問題を出すのに(中略)が直前にあるのはいかがなものかと思います。
問5
理由①は問題ないと思うのですが、理由②(社会全体の不利益)は「少子化」のような具体例のほうが先行して登場するので、具体例を用いて説明した生徒が続出することが予想されます。これがどのように採点されたのかが気になるポイント。
大問1は文章そのものが比較的難解で、大問2以降は文章はやさしいものばかりですが、問題文にトラップが多く、案外得点しにくい。
学テA、Bに比べると難易度上がった印象を受けますが、いかがだったでしょうか。
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