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テストレビュー

2023年 学力テストC国語レビュー

国語学テCの感想です。

大問1(俳句、随筆)

出典:武馬久仁裕「俳句の深読み」
1948年愛知県丹羽郡古知野町(現・江南市)に生まれる。1974年12月「地表」同人となり、小川双々子に師事。現代俳句協会評議員。黎明俳壇選者。鈴木しづ子顕彰会「いのちの俳句大会」選者。鈴木しづ子顕彰記念事業「全国大学生俳句選手権大会」審査員。

良くも悪くも昔ながらの学力テスト。

何が良いかというと、俳句という普段生徒が慣れていないジャンルを扱う、国語の幅を広げてくれる問題だということ。

あと、問題としておかしな問題とか、不適切な問題とか、昨日英語で述べたような悪問が出ていないこと。

では、何が悪いのか。

「部分的な知識」だけでほとんど解けてしまい、文章全体を読む必要性がまったくないところです。

この問題、わたしが武馬久仁裕さんだったら怒りますよ。

武馬久仁裕さんの文章の趣旨にほぼ問題で触れることなく(せいぜい問1で申し訳程度に触れるだけ)、季語と季節と体言止めという断片的な知識のみに終始してしまっています。

Cの俳句の「自信」の部分に作者の心情を発見させる問題は良い問題だと思いますし、季語と季節と体言止めを問うことじたいは別にいいんです。

それを「文章全体の趣旨の読解」に一切つなげず、断片的知識を断片的なまま問うとのは、ちょっと今の入試レベルに追いついていない出題だと思いますし、筆者に対するリスペクトも感じられないのでわたしは好きではありません。

道コンもたまにこういう問題出すことはありますけどね……。

大問2(小説)

出典:阿部夏丸「泣けない魚たち」
1960年豊田市生まれ。松平高校から名古屋芸術大学へ。処女作「泣けない魚たち」で第11回坪田譲治文学賞・第6回椋鳩十児童文学賞をダブル受賞、「オタマジャクシのうんどうかい」で第14回ひろすけ童話賞を受賞した。小学館のアウトドア雑誌「BE-PAL」で、阿部夏丸責任編集「月刊雑魚釣りニュース」を10年担当している。執筆活動のかたわら「川遊びのワークショップ」や「講演会」も多数行う。大人から子供まで楽しめる川と生き物の話は氏の人柄によるところが大きい。生まれ育った矢作川を愛し、矢作川水族館(流域グループ)の館長を務める。豊田市畝部東町在住。

川釣りガチ勢な感じの人なので、作中のアユについての解説もリアルな感じです。

問2

「するんだ」と書いて✕になる生徒が多そう。

問7

答えは単純に傍線の後ろを抜き出せばいいだけではあるのですが、この問題で間違えた人の多くは、おそらく

「友達が増えれば楽しいことも増える」

「友達がたくさん増えることはいいことだ」

のような部分から書き始めてしまったのではないでしょうか。

これは授業でいつも言っている本当に重要なポイントなのですが、国語の記述問題はもう書き始めた段階で勝負がついているものです。

つまり「どんなことを書こうか」と事前に決めることが最も大事で、いくら一生懸命書いても答えを書こうとする方向性がズレていたら時間と労力のムダにしかならないものです。

この問題は、傍線部「できなかった」理由を答えるものです。

だから、答えに書くべきはすべて「こうすけの考えを否定できなかった理由」でなければいけない。

にもかかわらず、先ほど例として示した

「友達が増えれば楽しいことも増える」

「友達がたくさん増えることはいいことだ」

は、逆に「こうすけの考え方を否定すべき理由」なので、まるで正反対なのですね。

まるで正反対の内容を、答えに書く必要性はゼロです。

・こうすけに対する僕の気持ち

・学校のみんなに対する僕の気持ち

という2つの指示にそって「こうすけの考えを否定できなかった理由」を探せば、必然的に模範解答のような答えが出来上がるでしょう。

記述問題の答えというのは、生徒が創作するものではありません。

・傍線内容

・問題指示

によって「自動的に決まる」ものです。

問題としてはシンプルで、これも「昔ながらの学力テスト」という感はありますが、決して悪い問題ではないと思います。ただ大問1に続いて難易度としては易しめなので、厳しい出題が続く道コン国語とのレベル差は激しいです。

大問3(古文)

出典:本居宣長「玉勝間」
本居 宣長は、江戸時代の国学者、医師。名は栄貞。本姓は平氏。通称は、はじめ弥四郎、のち健蔵。号は芝蘭、瞬庵、春庵。自宅の鈴屋にて門人を集め講義をしたことから鈴屋大人と呼ばれた。また、荷田春満、賀茂真淵、平田篤胤とともに「国学の四大人」の一人とされる。伊勢松坂の豪商・小津家の出身である。

またしても拙著「古文単語速読マスター500」から的中。

まぁ「古文単語速読マスター500」は中学~高校1年レベルの古文のスタンダード・ナンバーをかき集めて作った本なので、そこから高校入試問題が出るのは当たり前といえば当たり前の話です。

全訳(古文単語速読マスター500より引用)

私が古典を解釈するときに、先生の説と違うことが多く、先生の説に良くない点があるのを見抜いて言うことも多かったのを、全くあってはならないことだと思う人が多いようだが、このことはつまり私の先生の意向であって、いつも(先生に)教えられたことは、「あとで良い考えが出てきたとしたら、必ずしも師匠の説と違うからと言って遠慮してはならない」と教えられた。これはとても立派な考えであって、私の先生がとても優れていらっしゃることの一つである。

問4は何なの……?

知識として一般的な中学生が知っているわけはないし、文脈解釈なら別にアでも筋は通るじゃないですか。

出題意図がわからない。

大問4(評論)

出典:広田照幸「学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか」
日本大学文理学部教授。1959年、広島県東城町(現庄原市)生まれ。南山大学助教授、東京大学教授などを経て、現職。幅広く近現代の教育を研究しながら、現代の教育改革についても考察を進めている。著書に『日本人のしつけは衰退したか』(講談社)、『陸軍将校の教育社会史』(世織書房、サントリー学芸賞)、『思考のフロンティア 教育』(岩波書店)、『格差・秩序不安と教育』(世織書房)、『教育は何をなすべきか―能力・職業・市民―』(岩波書店)など多数。

問1

問題としては別にいいのですが、わたしが生徒から入手した模範解答が、すべて「トメ・ハネ」を強調して示されているのが気になります。

「トメ・ハネ」はあくまでも一つの例、一つの考えにすぎず、「トメ・ハネ」が違うと言って✕にするのは採点としてNGです。

問4と問5は、まったく同じことを2回聞いているように見えます。

問5のほうの採点基準ってどうなっているのでしょうか。

問4と同じように

「自分が何をしたいのか」を探すこと

と書いても何も問題ないですよね。

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