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テストレビュー

2025年 学力テストB国語レビュー

大問1(詩)

出典:岸田衿子『あかるい日の歌』より「アランブラ宮の壁の」
日本の詩人・童話作家(1929-2011)、翻訳家。詩誌『櫂』同人。 詩集に『忘れた秋』『らいおん物語』『ソナチネの木』などがある。1966年、絵本『かばくん』でドイツ児童図書賞、1974年、絵本『かえってきたきつね』で産経児童出版文化賞大賞を受賞した。 

出典:茨木のり子「詩のこころを読む」
日本の詩人(1926-2006)、随筆・童話・脚本も執筆。 主な詩集に、『見えない配達夫』、『鎮魂歌』、『自分の感受性くらい』、『倚りかからず』など。

問3
①に模範解答を当てはめたときの
「迷うことは普通ふっきろうとして無理をするものだが」
という日本語がわたしには結構違和感あります。
「ふっきる」は他動詞なので、「迷うことは」という主語を表す表現とは相性が悪く、「迷うことは、普通それをふっきろうとして無理をするものだが」のように目的語的な表現を挿入したほうがずっとおさまりがいいと思います。

②は「アランブラ宮の壁」と答えて✕になった人が多いでしょうが、それは問題文の趣旨を把握していないからです。今回は「解説文の筆者」の記述をまとめる問題なので、あくまで「解説文」に何と書いてあるかをもとに解答を出さないといけません。

問4
これは「尋常」の使い方がもはや現代では死語に近いレベルなので、中学生には厳しい問題です。高校生でも解けない人多いはず。
「尋常=普通」の意味なので、「普通に」入口から入るのと、「普通とは違って」出口から入るのを並立させている。
「子どもがお化け屋敷に入る様子」なので、アでもいいんじゃないか? と考えた人も多いでしょう。気持ちはわかりますが、「お化け屋敷」ですからね。そんなに元気よく入るものではないでしょう、普通は。

大問2(小説)

出典:宮島未奈「それいけ! 平安部」
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒業。2021年「ありがとう西武大津店」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞などトリプル受賞。同作を含むデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』は、坪田譲治文学賞、2024年本屋大賞など多数受賞。他の著書に『成瀬は信じた道をいく』『婚活マエストロ』。

県立菅原高校の入学式当日、同じクラスになった安以加から「平安時代に興味ない?」と栞は声をかけられた。「平安部を作りたい」という安以加の熱意に入部を決めるが、新部を創設するには五人の部員が必要だった。あと三人(泣)。知恵をしぼって部員を集め、平安部は誕生するが、はたしてどんな活動が始まるのか──!?(公式サイトより)

問1
ふだんお目にかかれないような漢字の読みが多く、さすが「平安部」というところです。

問2
「ない」の識別は定番問題ではありますが、品詞名をしっかりと答えたうえで、さらに完全解答ですべて選ばせるのでかなりの難易度です。道コンよりずっと難しい。
……当塾生であれば当然余裕でできていてほしいですが、どうでしょうか。

問4
「わたし=栞」ということですね。
5人いて、「あとの4人」なので「わたし」本人はカウントされない。

問6
問われているのは「わたし=栞」の心情ですが、線が引かれているのが「栞」のセリフではなく「(おそらく)部長」のセリフなので、次の①②どちらの方針で解答を作るべきなのかが判断しにくい。

①セリフの主である「部長」が気づいていることだけを答えるべき
②「栞」の心情として正しければ、「部長」が気づいているかどうかに関わらず解答に入れてよい

今回で言えば解答要素B「平安時代の人が今を切り取るために歌を詠んだ」というのは「栞」のセリフに明確に書かれていて、「部長」はこのセリフを聞いて「いみじ!」と言っています。ということは、①②いずれの場合でもこの部分は解答に入れるべきです。

ただ、解答要素A「暗くて静かで穏やかなこの空間に、ずっといたいけれど永遠にいることはできない」は「栞」の心中でしか語られていないので、「部長」はこの具体的な内容を知らない。
であれば、これを記述内容に含めるべきかどうかは意見が分かれるところかと思います。
(まぁ入れないと字数に明らかに届かないので、実際は入れるしかないのですが)

大問3(古文)

出典:「竹取物語」
平安時代前期に成立した日本の物語。「現存する日本最古の物語」とされる。

全訳
かぐや姫が、泣きながら言うことには、「以前も申し上げようと思っていたけれど、(竹取の翁たちが) きっと混乱しなさるにちがいないと思って、今まで(黙って)過ごしていたのです。いつまでもそうはいかないと思い、打ち明けたのです。わたしの身は、この国の人間ではない。月の都の人である。それを、前世からの約束があったことによって、この世界に参上したのだ。今は、帰らねばならない時になったので、今月の十五日に、あの元の国から、(私を)迎えに人々がやってくるだろう。避けられず(月の都へ)去らなければならないので、(竹取の翁たちが)嘆き悲しむだろうことが(私にとって)悲しいことなので、この春から嘆き悲しんでいるのです」と言って、ひどく泣くのを、竹取の翁は、「これは、何ということをおっしゃるのか。竹の中からお見つけ申し上げたけれど、菜種のような大きさでいらっしゃったのを、私の背丈と同じぐらいになるまでお養い申し上げた我が子を、誰がお迎え申し上げるというのか。(いや、そんなことはさせない)どうして許せるだろうか。(いや、許せない)」と言って、泣き騒ぐこと、本当に耐えられない様子である。

文章のボリュームもあり、注釈も多くないので普通に考えたら難しいレベルですが、出典箇所があまりにも有名であらすじを知っている生徒がかなりの割合を占めるでしょうから、古文として読解できたかどうかというよりはこのストーリーを知っていたかどうかで点数が決まってしまうように思います。

問1
中学でみんな習っているのでしょうか、これ?

大問4(評論)

出典:岡西政典「生物を分けると世界が分かる」
1983年、高知県生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程修了。博士(理学)。文部科学省教育関係共同利用拠点事業(京都大学瀬戸臨海実験所)研究員、茨城大学理学部助教、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所(三崎臨海実験所)特任助教などを経て、2022年4月より広島修道大学人間環境学部助教。著書に『深海生物テヅルモヅルの謎を追え!』(東海大学出版部)、『新種の発見』(中公新書)など。日本動物学会論文賞・藤井賞・奨励賞、日本動物分類学会奨励賞、科学技術文部科学大臣表彰(科学技術分野)若手科学者賞などを受賞。北海道大学理学部在学時に分類学に出会い、様々な未知の動物を求めてフィールドを駆け巡る。

すべての生物学の土台となる学問こそが、分類学だ!
なぜ、我々は「ものを分けたがる」のか? 人類の本能から生まれた分類学の始まりは紀元前。アリストテレスからリンネ、ダーウィン……と数々の生物学の巨人たちが築いてきた学問は、分子系統解析の登場によって大きな進歩を遂げている。
生物を分け、名前を付けるだけではない。分類学は、生命進化や地球環境の変遷までを見通せる可能性を秘めている。生命溢れるこの世界の「見え方」が変わる一冊!(講談社公式サイトより)

問1
読みよりは書きのほうがだいぶ標準的レベルですね。

問2
まさに今わたしが取り組んでいる「基礎語彙テスト」そのもののような問題です。「つぶさに」知っていたでしょうか?

問3
これも大問2の問6と同様、問い方が曖昧かなぁ、と。
答えがアとエであるのはわかりますが、「本当はア・エだけで判定したわけではない」というのが筆者の主張ですから、本当は根拠と言い切れないものを「根拠」として解答しなくてはならない。

ちょっと質問の仕方に疑問符が付く問題はありますが、本文もなかなか面白いですし、知識問題もディープなところまで攻めていますし、学テABCとしてはなかなか面白い問題だったのではないでしょうか。
ただ、読解問題としてひねりの効いたものはほとんどなく素直な問題ばっかりだったのと、古文が本文読まなくてもほぼ常識的に解けてしまう内容なので、点数は案外取りやすいように思います。
大問1、大問4で差がつくのでは。

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