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テストレビュー

2024年10月 中3道コン国語レビュー

大問1(漢字)

「進捗」の「捗」って漢検2級レベル(=高校卒業レベル)の字のはずなのですが、これを中3のテストで出すのはアリなのだろうか??
まぁ、これまで出題されてきた漢字が中学学習範囲におさまっていたのか? と言えば明らかに違うような気がするのですが、となると「入試、模試に出題してよい漢字」とそうでない漢字の線引きは実態としてどうなってるのでしょう。
模試あるいは入試作問経験者の先生と会ったら聞いてみよう。

「承認」の書きもわりと難しいほうだと思います。

大問2(資料問題、知識)

若干設定に強引なところはあるものの(そんなに毎年毎年体言止めと七五調が使われることがあるか)、熟語の構成、表現技法、内容理解、定型表現(七五調)がうまく一つのストーリーで問われていて、「よく練って考えたものだなぁ」と感心しました。

難易度も適切なものだと思います。
2020年と2021年が「中止」になっているのも芸が細かくていいですね。

大問3(小説)

出典:まはら三桃「零から0へ」
福岡県北九州市生まれ。2005年「オールドモーブな夜だから」で講談社児童文学新人賞佳作となり、翌年『カラフルな闇』と改題し刊行。工業高校の女生徒が「高校生ものづくりコンテスト」に臨む『鉄のしぶきがはねる』で2011年度坪田譲治文学賞、第4回JBBY賞を受賞。また『おとうさんの手』が2011年読書感想画中央コンクルール課題図書に選定された。

すっかり入試小説界のド定番著者となりましたね。
「鉄のしぶきがはねる」は、わたしの「やさしい中学国語」にもメイン問題として収録させていただいております。

ただ、リード文で、これがいつの時代設定の小説なのかはコメント入れておくほうが親切だと思います。
「海軍」「零戦」というキーワードだけで、つまりこれが第2次世界大戦後の話であるとパッとわかる生徒の割合は、もはやそれほど高くない。

問1
これ、意外と間違える生徒多いような気がするのですが、どの程度の正答率になるのかすごく気になります。
何も考えずにアを選ぶ生徒と、うしろの平林さんのセリフ「勉強している」だけを見て短絡的にウとかエを選んでしまう生徒と両方が想定できます。

「会話のリアルな流れ」を想定できないと、なかなかイを選ぶことはできないような気も。
逆に、「なぜヒトはこの会話の流れから答えがイだとわかるのか」を指導者はよくよく考えておく必要もあると思います。

問3
傍線2のところは本文の表現そのまま引っ張ってくるだけで作成可能ですが、傍線3はダイレクトに心情語として明記されていないので自分で言葉にする必要があります。
道コン、北海道入試では珍しいタイプなのですが、こういう問題も本来ぜんぜん珍しくないものなので「本文から丸写しすることが記述問題の解答法」だと勘違いしている人は姿勢を改めなくてはいけない。

……あまり作家に対して批判的なことを書きたくはないのですが、本文、ちょっと児童文学にしてもセリフまわしがクサすぎると思いますし、地の文も必要以上に説明的すぎて興が削がれる感はいなめなかったです。
戦争に対するキャラクターの見方も通り一遍な感じで、その時代を乗り越えた人間ならではのすごみ、深みをもっと感じさせてほしいな、と。現代人が現代の視点だけでこしらえた、リアルさを感じさせない人物造形に見えてしまいました。

大問4(評論)

出典:高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」
大胆に切り捨てる一方、多様な要素を隔てなく取りこむ…それは、私たちの感性にも通じるから。センス・オブ・ニッポンの本質を日本美術に検証する。
1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「日本の美」vs「西洋の美」という昔からあるド定番テーマで、かつ前半が西洋、後半が日本というシンプルな段落構成なので、やや文体こそ固いものの読みやすいレベルの評論だと思います。

問5
問題文の日本語がちょっと……。

「日本人は、美はどのようなものであるという感覚を持っているため、どのようなことをしていると考えていますか。美はそのようなものであると感じる理由に触れながら~」

こんな言葉づかいが日本語に存在するのかと。
わたしなりに修正するなら、

「日本人は美をどのようなものだと捉えていて、その捉え方がどのような振る舞いにつながっていると筆者は考えているか」

こんな感じで十分模範解答に書かれているような答案を引き出せるのではないかと。
出題者が「模範解答を構成する要素」と問題文の文言を1on1で対応させようとしすぎて、逆に日本語がおかしくなってしまったのかなと。学力テストでもよくある現象なので、もしかして学力テストABCの問題文をトレースしようとした……??
問題としては最終段落のコピーだけでしかないので容易なレベルではあります。

大問5(古文)

出典:「古今著聞集」
鎌倉時代、13世紀前半の人、伊賀守橘成季によって編纂された世俗説話集。単に『著聞集』ともいう。事実に基づいた古今の説話を集成することで、懐古的な思想を今に伝えようとするものである。20巻30篇726話からなり、『今昔物語集』に次ぐ大部の説話集である。

問題に対して取り立ててコメントするようなことはないのですが、そもそも「供米の不正」ということの意味がわからないのでは??
まず、「米を寺に納める」というのは、歴史で習う「荘園」をイメージしてもらえればよいでしょう。
貴族や寺社が私有地=荘園を持つということは、その荘園の農民たちから年貢として米を納めさせるわけです。
年貢を集めるときに、この寺の僧侶が朝廷に米を納める前に中身を米ぬかにすり替えて、本物の米はどこかに売ってしまってカネにかえて、自分のものにしてしまうということですね。今で言うところの「横領」です。

だから本文7行目、「このままにしてはおけない」と法師どもが必死に米俵を取り押さえるわけです。
中身が米ぬかだとバレてしまうと自分たちが困るからこその行動ということです。

第1問の漢字は難しめかと思いましたが、それ以降特に難しいところは特になく、記述量が多いということを除けば平易なほうの道コンに感じます。

第2問が個人的にはすごく好きです。

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