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テストレビュー

2021年共通テスト(第1日程)漢文レビュー

書き下し文

いろいろなサイトに掲載されていると思いますが、一応ここにも記載しておきます。

問題文1
吾に千里の馬有り 毛骨何ぞ蕭森たる
疾く馳すれば奔風の如く 白日に陰を留むる無し
徐ろに駆くれば大道に当たり 歩驟は五音に中たる
馬に四足有りと雖も 遅速は吾が心に在り
六轡は吾が手に応じ 調和すること瑟琴の如し
東西と南北と 山と林とを高下す
惟だ意の適かんと欲する所にして 九州周く尋ぬべし
至れるかな人と馬と 両楽相侵さず
伯楽は其の外を識るも 徒だ価の千金なるを知る
王良は其の性を得たり 此の術固より已に深し
良馬は善馭を須つ 吾が言箴と為すべし

問題文2
凡そ御の貴ぶ所は、馬体車に安んじ、人心馬に調ひ、而る後に以て進むこと速やかにして遠きを致すべし。今 君は後るれば則ち、臣に逮ばんと欲し、先んずれば則ち臣に逮ばるるを恐る。夫れ道に誘めて遠きを争ふは、先んずるに非ざれば則ち後るるなり。而して先後の心は臣に在り。尚ほ何を以て馬に調はん。此れ君の後るる所以なり。

現代語訳

訳は基本的に直訳ベースで、意訳せずに訳せるところはできるだけ意訳せずに訳しています。
また、訳の正確性は一切保証しません。この訳を引用、利用したことによる損害には一切責任を負いません。

問題文1
私には千里を走る馬がいて、毛並みと骨格は何とひきしまって美しいことか。
速く走らせれば風のようで、晴れた昼間でも陰が見えないぐらいだ。
ゆっくり走らせれば大きな道の上を駆けるその音は音楽のようだ。
馬に四本の脚があると言っても、それが遅く走るか速く走るかは私の心のままだ。
手綱は私の手の動きに即応し、調和することはまるで大きな琴と小さな琴のようだ。
(大きな琴=馬、小さな琴=人、ととらえれば「人馬一体」の調和を意味することがわかる)
東西と南北と、山と林と行ったり来たりする。
ただ、私が(馬も?)行きたいと思う所は、中国全土をどこでも訪れることができる。
至るものなのだなぁ。人と馬とが、お互いが楽しく、お互いを侵し合わない境地に。
名伯楽は、馬の外見のことをよく知っているが、ただ馬の価値が千金に値することがわかるだけである。
それにひきかえ王良は馬の性質をよくわかっていて、その馬術は根本的に最初から深いものである。
良い馬は優れたパートナーを必要としている。
私の言葉を戒めとするべきである。

問題文2
そもそも馬術が重視することは、馬体が車と安定した状態になって、人の心が馬と調和して、その後で、速く遠くまで進んで到着することが可能になる。今、君主は遅れたらすぐに私を捕えよう(=追いつこう)と思い、逆に先行した場合は私に捕えられることを恐れる。そもそも、道に馬を(対戦相手を?)誘い出してどちらが遠くまで行けるかを争うのは、先行するのでなければイコール遅れることと同じである(だから目先のことばかり気にするべきではない)。そして先行するのか遅れているのかを気にする君主の心は(馬ではなく)私に向いてしまっている。それでどうして馬と心を調和させることができるのか、いやできない。これが、君主が私に遅れてしまう理由である。

問題文1解釈上のポイント

・2~3行目が対句になっていることに着目する。
「歩驟は五音に中たる」の意味が理解しにくかったかもしれないが、要するに「馬を褒めたたえている」文脈であることを前提に読めば大意は取れるはず。

・5~6行目が、問題文1と問題文2をつなぐ重要なフックになる。
ここで「人馬一体」「人心と馬との調和」が重要である、という主張を把握しておけば、問題文2の解釈が非常に楽になると同時に、問3解答の根拠にもなる。

・8行目は意味が取りにくいが、これも5~6行目「人馬一体」「人心と馬との調和」を理解して、その文脈上に位置づけることで「両楽相侵さず」の大意は把握できる。

・9~10行目も、2~3行目と同様に対句になっていることがわかればよい。
9行目は「徒だ」の意味から、ネガティブな内容であることを理解したい。
その対比なのだから、10行目「王良」については作者がポジティブな評価を下していることがわかる。「深し」と10行目にあるので、そこから9行目「伯楽=浅い」という類推をしてもよいだろう。

問題文2解釈上のポイント

・冒頭の「凡そ御の貴ぶ所は」がいきなり訳しにくいが、「御=御術」であるのは明らかだし、その後の「馬体車に安んじ、人心馬に調ひ」から、つまり馬術における重要な教訓を語っていることは理解できるはず。
そしてこの時点で、問題文1「人馬一体」「人心と馬との調和」が頭に入っていれば、内容的に共通性が強いことがわかり、解釈上有意義。

・傍線Cは「遅―先」の対比関係を見抜けば、これもまた対句であることに気づくことができる。今回の共通テスト漢文は対句を見抜けるかどうかで解釈の精度が大きく変わってくる。

・「先んずるに非ざれば則ち後るるなり」の意味は、今回最も解釈しにくいところだと思う。ここから「目先の勝ち負けに気を取られず、馬に集中しろ」というメッセージを見つけるには、問題文1~2のここまでの流れから「人馬一体」「人心と馬との調和」をしっかりと前提に置いて解釈することが重要だろう。文脈からの解釈を取る力が求められる。
次の「先後の心は臣に在り。尚ほ何を以て馬に調はん。」も、「臣」と「馬」が対比関係を作っていることがわかれば理解しやすい。

問題解答のポイント

問2(1) 要するに「馬を褒めたたえている」文脈であることが分かれば「詠嘆」で取るべきだとわかる。「反語」で取ってしまうと、「いや、ひきしまっていないし、美しくない」という意味になってしまうので真逆。

問2(3)何度も述べているとおり、今回の文章のメッセージは一貫して「人馬一体」「人心と馬との調和」。直訳から正解を導くのはちょっとツラいかもしれないが、このメッセージをおさえていれば④しかない。
(おそらく間違えやすいのは②だが、②だと「馬→人」の理解だけになってしまって、「人→馬」の理解に触れていないことになる)

問3 押韻の基礎知識(偶数行の最後は同じ音でそろえる)は中学生でも一応勉強することなので、だいたいの受験生は②③⑤に絞れるはず。あとは「人馬一体」「人心と馬との調和」のメッセージから考えると②しかない。
③だと意味不明だし、⑤を選んだ人は「馬を、自分の家臣のように自由自在に動かせる」と解釈した? それだと「臣の如く」のようになるはず。

問4 漢文で「所」という漢字は非常に解釈上重要。
英語で言うところの「関係代名詞」「接続詞that」「関係代名詞what」のような名詞のカタマリを作る。
(「S所V」で「SがVすること、もの、ところ」のようになる)

問5~6 「解釈上のポイント」を理解できていれば楽勝。

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